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《2014.7月−8》

マンネリだな、もっと壊せ
【ハムレット (子供のためのシェイクスピアカンパニー)】

作:W.シェイクスピア 脚本・演出:山崎清介
26日(土)14:00〜16:05 北九州芸術劇場 中劇場 2,500円


 そんなに多く観ているわけではない子供のためのシェイクスピアカンパニーの舞台だが、この舞台は、表現方法がこれまで観た公演とほとんど変わらず、戯曲へのアプローチもいま一歩で、新鮮味に乏しい舞台だった。

 父である先王が亡くなってすぐに、王になった叔父と結婚した母が信じられなくなったデンマーク王子ハムレット。そんなハムレットに父の幽霊が現れて、先王が叔父から殺されたことを知らされる。

 舞台には小学校の教室にあるような木製のイス10個と机5個。それを俳優たちが場面に合わせて動かす。俳優たちは頭をすっぽり覆う大きなフードをもつ長い黒コートを着ていて、明確な役を演じるときはそれを脱いで役の衣装に着替える。俳優たちはリズミカルに手を叩いて登場や場面の転換を強調する。山崎清介は常時人形を抱えていて動かしたりしゃべらせたりする。
 原作戯曲のセリフはかなりカットされてスピーディな展開だが、戯曲の骨格を変えるような改変はなくて戯曲に忠実な上演だといえる。
 以上のようなことはこの劇団のほとんど決まりきった方法なので、どの舞台も似た印象になるのは避けられない。そういうなかでいかに新鮮味を出すかとなると、戯曲をいかに読み解いたかがポイントになる。

 正直、「ハムレット」はいろんな解釈がありすぎてよくわからない。ハムレットのメランコリックなところが強調され、この戯曲が「悲劇」であることを忘れたような上演も多い。それぞれの人物もどこか不鮮明で、何を考えているかよくわからないところがあって、強引に解釈しないとそのほんとの顔を引き出せない感じさえある。
 人物はそうでも、悲劇のドラマとしての転換点は戯曲にキッチリと書き込まれている。そこをちゃんと押えれば、この劇のダイナミズムが見えてくるだろう。ハムレットのメランコリックはそのための伏線くらいに考えたほうがいいのかもしれない。

 この舞台はストーリーをていねいになぞっていて、全体のバランスは悪くはない。しかしそのなぞりは、表面を揉みほぐしてわずかにデコレートしただけという印象しかない。サラリとしていて、この戯曲の持つ力が伝わってこない。これではただの手違いで悲劇が起きたとしか見えず、時間的広がりも空間的広がりも感じられない。
 演技者ももっとのたうちまわったほうがいい。「ハムレット」をなぜ演るのか、「ハムレット」をどうとらえるのかを、演技者自身がもっと前面に出すべきだ。アンサンブルはそのあとだ。

 この舞台は、子供のためのシェイクスピアカンパニーによるシェイクスピア生誕450周年・シリーズ20周年の記念作品で、北九州ではきょう1ステージ。ほぼ満席だった。


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