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《2014.8月−1》

身につまされるがおもしろい、文枝の新作
【桂文枝独演会 (大川市文化センター)】

構成:桂文枝
1日(土)15:00〜17:20 大川市文化センター 2,500円


 久々に聴く六代目桂文枝の落語2席は、文枝師匠の年齢相応の内容の新作で、身につまされるような話をうまく笑いに結びつけていて楽しめた。

○桂三語「ちりとてちん」
 桂三語はまだ20代の若い落語家。モヒカン調のヘアスタイルで元気いい。高座も大きな声でエネルギッシュだが、粗くて言い間違いが多い。
 「ちりとてちん」は東京と関西とを比べると、関西のほうが腐った豆腐に異様な味付けをするなどどぎついが、この高座ではその上にさらに痰を吐いて混ぜるところまでやるので、気色悪くなってしまった。。そこまでやると、もはや知ったかぶりをからかうというレベルを超えている。約20分。

○桂三風「引き出物」
 桂三風は芸歴30年の落語家で、師匠に倣って100本以上の自作落語があるベテラン。「客席参加型落語」という独自の高座スタイルを確立して史上初めて高座スタイルの商標登録をしたという。
 「引き出物」は文枝師匠の作のようだ。結婚式の引き出物の鰹節が、鰹節削りがなかったばかりに物入れに放り込まれる。そこは贈り物や引き出物の墓場だった。
 物入れに捨てられたように放り込まれ物たちの会話はおもしろいんだけれど、しゃべりにメリハリがなくて表情も単調で、会話のおもしろさがなかなか引き立たないのが残念だった。15分強。

○桂文枝「喫茶店の片隅で」
 創作落語300席に挑戦中の文枝師匠。新作の「喫茶店の片隅で」の登場人物は、散歩中に立ち寄った喫茶店の同世代の客がモデルとなったという。それらの人物の言い草が個性を映していて実に楽しい。そんな中からドラマが紡ぎだされて、ちょっとビックリしてからホロッとして、ほのぼのと終る。
 観客を引き込む話術のキモは絶妙の間だ。大きく・小さく や 重く・軽く もあるが、いちばんは 畳みかける・引っぱる で、緩急自在に聴く者を動かす。人物どうしの会話に加えて聴衆への語りかけがあって、高座が常に開かれているという感じがある。45分弱。

○桂文枝「世界ふしぎ体験!」
 トリは、7月30日の大阪での「創作落語の会」でネタ下ろししたばかりのホヤホヤの新作で、終活で模擬葬式を体験をする父に付き合う家族の話。終活に絡むいろいろと身につまされる話も、父親のワガママパワー噴出でやんわりと匂わすだけに弱められていて、これまたほのぼのと終るかと思いきや・・・。
 途中で急に照明が落ちてアレッ?と思うところはあったが、質の高い新作落語を堪能した。文枝師匠の落語は三枝時代に聴いてから8年ぶりくらいだが、風格が出てきたように感じた。約35分。

 最後に短いトークがあり、文枝師匠の音頭で「80歳までガンバロー!」というシュプレッヒコールが3回もあった。満員の客席もノリノリだった。


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