宝塚歌劇100周年記念公演は、プチ・ミュージカルをはさんで和物ショーと洋物ショーという3本立てで、ショーの楽しさをたっぷりと味わった。
○日本絵草紙「宝塚をどり」(植田紳爾:作・演出)
開幕、真っ暗な舞台に突然明りが入り、勢ぞろいしたメンバーが勢いよく踊りだすと、一瞬で宝塚の世界にもっていかれる。「チョンパ」という、華やかな開幕の演出だ。
宝塚歌劇100年を記念して百という数にちなんだ題材で構成される8場のショーで、「百年(ももとせ)音頭」「天女降臨」「三番叟」「よさこい」「祝百年」「すみれのボレロ」とテンポよく進んでいく。
「三番叟」は三面鏡に映った形を実際の踊り手が踊るという趣向が実に楽しい。「よさこい」は後半「YOSAKOIソーラン」的にダイナミックになる。
「祝百年」は獅子と牡丹をイメージした松羽目物で、獅子(龍真咲)と牡丹(愛希れいか)のそれぞれのソロとペアの踊りを謡と囃子に合わせてたっぷりと見せる。
45分間のショーで全員が5回ほども衣装替えする。
○プチ・ミュージカル・プレイ「明日への指針−センチュリー号の航海日誌−」(石田昌也:作・演出)
タイタニック号の遭難から22年後の1900年代初頭、ロンドンからニューヨークへ向かう貨客船「センチュリー号」を舞台に、船の通信士と若き人妻の恋を描く。
35分という短いミュージカルだが、ストーリーはタイタニック号の話も絡めてそれなりに入り組み、最後に人妻という制約を取り払う展開で祝祭劇らしいハッピーエンド。こんな舞台も楽しい。
○グランド・レビュー「TAKARAZUKA 花詩集100!!」(藤井大介:作・演出)
白井鐵造が1933年に発表した「花詩集」は、宝塚歌劇のレビュー・ショーの原点ともいえる伝説の舞台だという。その舞台を現代のアレンジで作り直し甦らせることを狙った24場の舞台は、50分間めくるめく展開していき息つく暇もないどほだ。
大きく分けると10ほどに分かれる舞台は、それぞれが花とその花の明確な色を強調する。オープニングの大階段のあとは、バレエの白(マーガレット)、ラテン系のダンスの赤(ケシ)、宝塚の象徴すみれ色(スミレ)など。
そのあと巨大なバースデーケーキが登場、そのまわりを40人が華麗なフォーメーションで踊り、ラインダンスもある「100本のバラ」。非常にセンスがいいこのシーン、振付は米ブロードウェーで活躍するジェフ・カルフーン、衣装はパリの「クレイジーホース」のデザイナー・アントワーヌ・クルックが担当しているという。
ラストはトップコンビのデュエットダンスのあと、パレードからカーテンコールへ。
きょうの公演は、博多座月組公演の千秋楽で宝塚歌劇100周年記念公演の大千秋楽。カーテンコールは10分以上かかった。この公演を最後に退団する美翔かずきのあいさつもあった。
そんなふうにとても楽しめた公演だったが、実はこの宝塚歌劇100周年記念公演の博多座バージョンは、宝塚と東京での公演とはかなり規模が違う。オーケストラはいないのはいつもの博多座公演と同じだが、月組の全部は来ていなくて「100本のバラ」が「40本のバラ」だったのは残念だった。