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《2014.8月−3》

お祭りだから
【志賀海神社 七夕祭薪能 (志賀海神社)】

構成:片山伸吾
6日(水)19:20〜20:40 志賀海神社 1,000円


 志賀島にはよく行くが、志賀海神社には行ったことがなかった。七夕祭薪能があるというので出かけた。
 奉納されたお能は「宵待之翁」だった。拝殿での上演で少し観にくく上演時間も短くて、観能としては不満があったが、お祭に参加したという気分にはなった。

 海べりの駐車場から山腹にある神社まで、階段の多い道を登って行くと、立派な社殿が現れる。拝殿の戸が取り外してあって外から見られるようにはなっているが、大きな横木などで視界はかなり遮られる。拝殿の正面と左脇が指定席で、左脇の指定席の外側が立見席。その立見席で観た。

 午後7時20分から参進(神事)。神職に導かれて演者が入場し、祝詞を上げお祓い・礼拝する。演者は、翁と千歳、囃子方の笛と小鼓、地謡が3人で、後見はいない。
 午後7時40分から演能。片山家では代々、滋賀県日吉大社において元旦神事として「ひとり翁」を奉納されているという。そういう伝統を踏まえてか今回上演の観世流のお能は、通常上演される「翁」「三番猿楽」から「三番神楽」を省略し「翁」は能面をつけずに舞う。宵の口に舞うというので、片山伸吾師が「宵待之翁」と命名したという。
 まだ明るさが残るなか、拝殿前の2つの照明に加え、拝殿外の2つの篝火に火が入るが、主な照明は拝殿天井のものだ。

 参進(神事)のあと、囃子方2人(笛:相原一彦、小鼓:飯田清一)が左手奥に、地謡3人が右手奥に座り、翁を片山伸吾、千歳を片山峻佑(片山伸吾師の長男で9歳)で、「宵待之翁」開演。
 翁の「とうとうたらりたらりら…」と祝福の呪文と謡のあと、千歳の片山峻佑が生き生きと露払いの舞を舞う。そのあと、翁の片山伸吾が対照的に荘重な舞を舞う。参進(神事)から引く続いての「翁」は、違和感なく演能に移行していき、儀式芸能としての「翁」の特徴がよくわかる。
 この演能では、翁が面を着けず橋掛かりもないために進行は速く、演能は20分ほどで終わってしまい、物足りなさは残る。

 そのあとほぼ30分間、中澤弘幸氏の講話があった。その話の中で出てきた阿曇氏(安曇氏)は、古代北九州で海人を司り海上を支配したとされ、志賀島と海の中道を含めた一帯がが阿曇氏の本拠地であったとされており、志賀海神社はその阿曇氏の中心的存在であったと考えられているという。志賀海神社が全国の綿津見神社・海神社の総本社を称するということも初めて知った。
 夜店は出ていなかったけれど、夏祭りの雰囲気は味わえて、楽しかった。客席は指定席が150席、立見席が100席で、ほぼ満員だった。


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