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《2014.8月−4》

下ネタは楽しい
【快楽亭ブラック落語会 (琥珀亭オトナ寄席)】

構成:快楽亭ブラック
8日(金)19:05〜21:10 琥珀亭(久留米) 3,000円


 久留米での第81回琥珀亭オトナ寄席に快楽亭ブラックを聴きに行った。
 古典落語も悪くはないが、「マラなし芳一」が圧倒的におもしろかった。快楽亭ブラックはやはり下ネタがいい。

「権助魚」
 まくらというか本題の前に、学校寄席の話と立川吉幸がらみの桂ぽんぽ娘の話で笑わせ、やきもちの話から本題に入る。
 本題の「権助魚」はオーソドックス。おかみさんが飯炊き男の権助を買収してダンナのお供をさせて浮気の報告をさせようとするが、ダンナからも買収されて、言い訳のため隅田川で網獲りした魚を買って帰るが、それが、鱈、ニシン、めざし、タコ、かまぼこ。
 おかみさんから問いつめられた権助の答えが振るっているが、すっとぼけながらおかみさんとダンナをおちょくっていて、確信犯だというのがわかる。約30分。

「たがや」
 川開きの花火大会を見ようという大勢の人でごった返す両国橋上で起こった、馬に乗った供連れの侍とのいざこざを描く。「たが(箍)」というのは桶や樽の周囲に巻いて締める竹製のもの。道具箱に入れていたたが弾けて侍の笠を弾き飛ばしてしまい争いに。
 これもオーソドックス。3人の供侍をやっつけ馬に乗った侍の首を飛ばしてしまうたがやだが、元々の話では首が飛んだのはたが屋のほう。立川談志はその元々の話をやっていたというが、そこは談志に倣ってはいない。約30分。

「『四谷怪談』でござる」上映
 映画「『四谷怪談』でござる」は、快楽亭ブラック脚本・監督・主演の15分ほどの作品で、2005年公開のオムニバス映画「『超』怖い話 THE MOVIE/闇の映画祭」 のなかの1編。本編もくだらなくておもしろいが、後説がもっとおもしろかった。
 冒頭、左団治の落語を演じるのがなんと歌舞伎俳優の市川左団治という思い切ったパロディ。伊右門が快楽亭ブラックで、お岩が林由美香。コマ数を減らしたような編集技法でわざとギクシャクとした動きにしている。快楽亭ブラック本人が言うように「四谷怪談」をうまく15分にまとめてはいる。
 この映画を撮るにあたって快楽亭ブラックはじめ関係者は、お岩様関係の3つの寺社にお参りをしたという。それなのに、この映画完成後にたたりとも思えるような災難が続いた。そのいちばんはお岩役の林由美香の死で、原因がわからないという。快楽亭ブラックも借金問題で立川流を退会。さらに解離性大動脈瘤を発病して生死の境をさまようことになる。エグゼクティブプロデューサーのライブドア堀江貴文社長にも不幸は襲った。
 何でちゃんとお参りをしているのに災難が続くのか。快楽亭ブラックはその理由をコクーン歌舞伎「四谷怪談」の会場で知ることになる。

「マラなし芳一」
 卑語を使った破廉恥・猥褻な噺とされる。話の展開は小泉八雲の「耳無芳一の話」そのままで、「耳」が「マラ」に置き換わっただけ。それに、「壇ノ浦夜合戦記」のように壇ノ浦の合戦の後に義経が建礼門院と通じたという話(ほとんどがセックスシーン)が追加されている。
 まぁ、「耳」か「マラ」かだと「マラ」のほうが説得力はあるが、いろいろ差しさわりがあるので小泉八雲は「耳」にしたんだろう。義経と建礼門院のセックスシーンはかなりリアル。高座でセックスシーンをリアルに演じる落語家はたぶん快楽亭ブラックだけだろう。それはキワモノというよりは、落語のおもしろさを広げているとみる。約25分。

 わたしは福岡で「快楽亭ブラック毒演会」を7回、「川柳・ブラック二人会」を1回開催している。久留米ではこの1年ほどのあいだに快楽亭ブラックの落語会は3回あっていて、そのうちの2回が琥珀亭での開催で、前回は4ヶ月前だったというから人気は高い。
 30席ほどの会場は満員だった。


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