とにかくおもしろい。「こどもとおとなのためのお芝居」と銘打たれていて、こどもにこそわかるようにとものすごくていねいに表現されているので、SF的センスに乏しいわたしにもとてもよくわかった。
亡くなった祖母の家に住むことになった中学生の輝夫は、その家に何かがいる気配を感じる。そこには確かに、人には見えない暗闇に住む者がいた。そのドジな新人と、輝男は話をしてしまう。
大野城まどかぴあの大ホールの舞台の上に舞台と客席が作られている。舞台は輝夫の部屋で、中央にベッドがあり学習机や水槽やダンボール箱がある。部屋のまわりには何本かの柱が立ち、その上には大きな2本の梁が乗っている。部屋の奥は白いカーテンで、部屋の左右と手前の3方に客席が作られている。
恐怖心もあって敏感になっている輝夫は、柱が軋んだり服を掛けたハンガーが落ちたりダンボール箱が倒れたりするたびにビクつき、ET人形がしゃべったりカーテンの向こうを祖母らしき影が横切ったのを見て、目に見えないものの存在を感じるが、母も姉も取りあってくれない。
と、同じシーンを、人の目には見えない暗闇に住む者を見えるようにして繰り返す。それらのことは暗闇に住む者のしわざだった。
暗闇に住む者とは何か。ドジな新人のまずい説明のために、この世界を乗っ取ろうとするエイリアンか何かと“勘違い”してしまった輝夫。それと実際との乖離をどう解消していくかがドラマの推進力になる。
70分というそれほど長くない上演時間の舞台だが、“勘違い”が引き起こした齟齬を引き金にして祖母と輝夫を二重写しにすることで、輝夫は負い目となっていた祖母とのできごとを告白できてトラウマになりかけていた悩みを解消する、というところを、みごとな構成力で密度高くしかもテンポよく見せる。
演出は大きな構成をきっちりと押さえた上で、細部にも実に繊細に目を注ぐ。暗転した時にゾワーっと背中を風が掠めた。たぶんそれも演出だ。
俳優は2年前の初演の時と変わっていないこともあってか、的確で安定していて演技の質は非常に高い。特に輝夫役の大窪人衛の表情はみごとで、暗闇に住む者の新人との丁々発止のやりとりの山場などで、セリフ以上のものが伝わってくる。
この舞台は、平成26年度公共ホール演劇ネットワーク事業として全国8ヶ所での上演で、大野城まどかぴあではきのうときょうで2ステージ。
満席だった。観客は親子連れが圧倒的に多い。その観客の観劇の態度が実にいい。子どものころからこんないい舞台を観られて、うらやましい。