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《2014.8月−11》

見応えのある、清々しい舞台
【木になる僕らのものがたり〜tasteful clogs cafe〜 (けちゃっぷゆでたまご−芝居やるばい!劇団編−)】

構成・総合演出:永山智行
23日(土) 13:05〜14:10 パトリア日田 スタジオ1 ひた演劇祭通しチケット3,000円


 劇作家チームによる日田への思いをうまくすくい上げた戯曲を、若い参加者が多い役者チームが初々しく演じていて、見応えのある清々しい舞台だった。

 日田の川開き観光祭の日、下駄Cafeにはいろんな思いを抱えたひとが出入りする。そんな人たちが緩やかに繋がり、木を通して癒されていく様を描く。

 舞台は、下駄Cafe。カウンターがあって、テーブルは3個。奥にはステージがあってキーボードとマイクと、丸木を組み合わせて作った古いイスが置いてある。客席は2方に設けられている。
 オーナー・信治。下駄Cafeで働く信治の恋人・かえで。バイト・しずく。下駄Cafeの客は、しずくに恋している市役所職員の岳。近所に住むキノコ博士(女性)とその息子。両親の離婚に悩む小学生のこずえ。そこに、東京から帰ってきたしずくの友だち・明日香と、川開きイベント会場から抜け出してきたアイドル・玲奈がやってくる。
 これらの人たちが下駄Cafeで互いに話して交流するうちに、次第に癒されて悩みも解消していくのだが、ちょっとした心の動きまで書かれ表現されていて、あらすじは簡単には書けないほどだ。

 脚本は、芝居やるばい!劇団編 劇作家チームの6人で、昨年のひた演劇祭の「書いてみる編」(台本を書いてみる講座、講師:永山智行)で集まった人たちだ。今年3月に永山智行による劇作家チームの講座を行い、チームの6人は取材などを重ねて短い作品を執筆した。それを構成・総合演出の永山智行が1本の脚本にまとめたという。
 脚本が、下駄や人助けの木の話など日田の多彩なものを多く取り込んでいるのは、劇作家チーム6人の日田への思いと取材力の賜物だろう。それを、“木のせい”などを登場させてうまく結びつける。一見おおごとなことも、コミュニケートして共有することで乗り越えられる。そんなところを甘くならずにリアルに描いている。

 演じる、芝居やるばい!劇団編 役者チームは、今年3月から永山智行による月1回の役者ワークショップを行ってきて、8月に1週間ほどの集中稽古を行って作り上げたという。
 出演者たちの演技は、そんな短い稽古時間で作り上げられたものとはとても思えないレベルだ。日常的な話し言葉で素直に話す。動きも自然だ。だから、それぞれの人の繊細な心の動きも伝わってくる。若い人たちがほんとに生き生きとしているのがいい。

 この舞台は、市民参加企画でここまでできるという見本みたいな舞台だが、こうなるのに小さな奇跡がいっぱい起こっているのかもしれない。
 この舞台はきょうとあすで2ステージ。少し空席があった。劇団名の「けちゃっぷゆでたまご」というのは、芝居やるばい!劇団編で結成された演劇祭だけの期間限定劇団ということだ。


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