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《2014.8月−15》

曲師沢村豊子に、驚いた
【玉川奈々福 浪曲ライブ (ピカラック)】

作:玉川奈々福
24日(日)15:05〜16:45 美容室グラム 2,500円


 玉川奈々福の浪曲はテーマも語り口も現代的だが、魂は浪曲そのもの。表情豊かな語りがいい。曲師の沢村豊子の三味線はむろん、そのたたずまいが何とも魅力的だった。

 玉川奈々福の浪曲の前に、この会の企画者である姜信子さんのあいさつが5分ほどあった。
 境内から俗世へ出て発展してきた語り物の最先端が浪曲で、その浪曲の最先端が玉川奈々福である、という紹介があった。

「浪花節更紗」(原作:正岡容、作:玉川奈々福)
 師匠に捨てられた若い浪花節語りが再入門したのは万年前座の浪花節語りのところ。次第に頭角を現すが、競演会で持ちネタを全部演られて困ったところを助けてくれた女曲師が、いまの師匠の娘だった。
 はじめに、「これまでに浪曲を聴いたことがある人?」と訊かれて手を上げたら指名されて、子どもころのころの浪曲体験を話した。先月主催した春野恵子さんの浪曲の会でわかったが、いまの40代以下の若い人には「浪曲」ということばが通じない。「浪曲は古臭いもの」というイメージも定着してしまっている。
 そのような浪曲のイメージを打ち破ろうと奮闘している浪曲師の一人が玉川奈々福だ。新作の浪曲を多く演じる。学校寄席では「浪曲シンデレラ」を演るという。きょうは、浪曲の世界を紹介する「浪花節更紗」と奈々福自身による完全オリジナル「金魚夢幻」という定番の2本立だ。
 「浪花節更紗」は辛苦のあとの成功話。ラストがちょっと都合よすぎるかなとも思うが、まぁ許容範囲で気持ちよく終る。玉川奈々福は顔の表現力が実に豊かで、演じる人物や状況によってビックリするほど変わる。曲師の沢村豊子との掛け合いも絶妙で、聴いていていい気持ちになってくる。口演時間約35分。

「金魚夢幻」(作:玉川奈々福)
 青い金魚を作った金魚師と青い金魚の話で、口演時間約35分。非常に珍しい青い金魚は借金のために金魚師の手を離れ、オークションで競り落とされてアラブの富豪の手に。それでも金魚師と青い金魚は互いを思い切れない。
 この状況をうまくハッピーエンドまで持っていくのはむずかしいだろ、どうするんだ?と思っていたら、荒唐無稽な手段で実現させてしまう。その荒唐無稽な金魚の旅が楽しい。終演後、「絵本になりそうですね」と言ったら、「わたしは声で皆さんの頭の中に絵本を作り出すんです」と言われてしまった。そうだな。
 曲師の沢村豊子のたたずまい・一挙手一投足がとても魅力的だ。三味線を弾く手と撥の動きの何という美しさ。目が離せない。大牟田生まれの83歳で、芸歴は70年以上。広沢虎造、三波春夫、村田英雄、二葉百合子などの三味線を弾いた。いまもトークをこなされ、きょうも観客の質問に滔々と答えられていた。

 終演後の懇親会では、いろいろ話をうかがえてよかった。理容室グラム内の会場は木造でいい雰囲気、マイクなしでも声がよく通った。40人ほどの客席は満席だった。


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