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《2014.8月−18》

パワー全開、陰影クッキリ
【GIGANT〜ギガント〜 (コンドルズ)】

構成・映像・振付:近藤良平
30日(土) 14:05〜15:55 イムズホール 3,200円


 多彩なアイディアをものすごくたくさんのシーンに詰め込んで、怒涛のごとく展開されるパワフルなパフォーマンスで、ビックリさせられ笑わせられたが、終ってみればクッキリとした印象が残った。
 基本のコンテンポラリーダンスは、近藤良平のソロのほか、様々なフォーメーションでのダンスに加え、アクロバティック・コント的・バレエ風・シルエットなどあって、ときにふざけたりすかしたりも。そこに人形劇や映像が加わってバラエティに富む。内容的にも、ファンタジー・SF・ホラー・文明批評・政治ネタなど多様だ。

 開演前の諸注意のアナウンスが野村萬斎。そのあとすぐのオープニング映像「劇場とは」で、演劇界の「巨人」野村萬斎が学ラン姿で世田谷パブリックシアターを案内する。
 舞台前面が2枚の大きな白布で覆われていて、映像や影絵のスクリーンになったり、左右どちらか半分だけ空けたり、中途半端に上げたり下げたりして使われる。白布が上がると、上手・下手・奥の3面には、1メートルほどの幅の朱と濃い水色の布が交互に天井から舞台まで吊るされていて、出演者はそこを押し上げて登場し、パフォーマンスにも使う。後半になるとその3面を覆うカラフルな布も引き下ろされて裸舞台になる。

 近藤良平のソロから始まり、学ラン姿のダンサーたちが徐々に登場していろんなフォーメーションでダイナミックに踊る。アーチ型に並んだ人の上や腕を組んで並んだ人の腕の上を歩くようなアクロバットがかったもの、宙に浮いた風船に背丈ほどの長さの紐をつけた7人がゆったりと踊る「エーデルワイス」のようなユーモラスで楽しいもの、近藤良平の空気人形や4人が馬上で弓を引くコントに近いようなものまで、ほんとに多彩だ。3組のペアがダイナミックに踊るロックの曲は、尻の下から振動が響いてくる。仕掛けがあるな。それらのダンスが終って映画のタイトルを模したタイトル映像が映し出される。「ウルトラマン」のパロディ映像もあったが、ここでだったかな。

 そのあとが、3人の落ちこぼれ高校生が妄想する「GIGANT〜ギガント〜」(巨人)がらみの話「進撃の等身大の巨人」で、テンポよく繋いでいくシーンそれぞれにふざけたアイディアが仕込んである。道具を使ったりスクリーンに影絵を映したりと、コントパフォーマンスは多彩で、これもすごいテンポで進んでいく。一段落したところで上手・下手・奥の3面の布が取り払われて裸舞台になる。
 これから先コントはさらに短くなりさらにハイテンポで進んでいく。小柄な橋爪利博が側転しなが口にスタンプ台の赤インクをつけてそれでモンローの写真にキスマークをつける、なんてのは楽しい。トラブルも含めて多いに笑わせてくれた人形劇も、浮くことなく流れにうまく収まっていた。バレエ風のダンスでは中心メンバーのダンスのうまさがよくわかる。ここでいったん白布が下りてユーモラスで生きのいい映像が流される。それが終って白布が上げられると、近藤良平のソロが始まり、そこのダンサーたちが徐々に登場して、激しく踊ってフィナーレ。

 3年ぶりにコンドルズ公演を観たが、完成度が高くなって作品に深みが出てきていた。「進撃の巨人」を読んでないのでそれがどこまでネタになっているのかわからないけれど、数ヶ所出てくる「等身大の巨人」が増えていくホラーが基調として全体を通底していて、暗さをベースにしていているために却って明るさが際立ち、陰影が深くなった。
 出演者は男性16人。中年がメインで若い人が混じり、中年には特に体形も容貌も際立って個性的な人が多い。高学歴で本職を持っていてバリバリ第一線で活躍している人が多く、ダンスのレベルにはかなり差があって、近藤良平の思い切った振付に全員がビシッとは決まらないが、そのズレとギリギリ頑張る姿が味になっている。コンテンツは、多彩なメンバーが持ち寄ったアイディアが惜しげもなく詰め込まれている。
 このコンドルズ日本縦断大進撃ツアー2014と銘打たれた公演は、東京都世田谷区の「こどもプロジェクト」というのから始まっている公演だそうだ。そのために各公演地で小中学生向けのワークショップがなされていて、15分ぐらいの「小さなコンドルズ」作品を作っている。福岡ではそれが、きょうの夜の公演でコンドルズの前座として発表される。
 気になったのは、メンバー紹介に今回初参加の香取直登 が (NewFace) と表示されているのはいいが、すでに3、4回も参加しているギンギラ太陽’s出身の ぎたろー には相変わらず (新人) という表示がされていること。これ、いつ取れるんだろう。ダンスができるようになってからかな。
 この舞台は福岡ではきょうとあすで3ステージ。ほぼ満席だった。


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