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《2015.1月−1》

美形はいいがやや単調
【1月博多新劇座公演 (劇団花車)】

構成:劇団花車
4日(日)12:00〜15:10 博多新劇座 1,800円


 6年3ヶ月ぶりという「劇団花車」の博多新劇座公演は、座長・副座長・花形と美形なのはいいが、脇を固める役者がいなくてやや単調なのが残念だった。

 座長・姫京之助は、玄海竜二劇団などへの客演でよく見る初代・姫川竜之助の長男で、1958年生まれだからいま56歳。もうひとりの座長・姫錦之助は姫京之助の長男で1981年生まれの33歳。2007年に座長に就任した。副座長の姫勘九郎は姫京之助の三男で1987年生まれの27歳。花形の姫右近は姫京之助の四男で1995年生まれの19歳。
 姫京之助は年齢のせいもあるが角張っていて男っぽいので女形も年増が多い。3人の息子たちはみな美形で見た感じがよく似ていて芸風も重なる。個性的な次男の姫猿之助は昨年独立した。「劇団花車」のそのほかの役者は女優と子役がほとんどで、脇を固める中堅の役者がいない。

 「顔見世ミニショー」で開幕して、演歌などに合わせた舞踊が6曲で約30分。
 着流しの若衆姿でのペアの踊りが多く、ときに5人で踊るがフォーメーションは同じような感じが多くて、単調さは免れない。

 お芝居「地蔵の宇の吉」が、休憩の後にほぼ1時間。
 「地蔵の宇の吉」は大衆演劇の定番ネタのようでいろんな劇団で上演されている。やくざの宇の吉は侠客の親分・小金井小次郎に騙って親分から10両を巻き上げて心中者を助けるが、女の足抜けのための10両を払っても男は殺され女は追っ手に追われる。その女を助けようとして宇の吉は殺されてしまうという何とも切ない芝居だ。
 前半はとてもテンポいい。京之助の小金井小次郎がビッチリと決まっていてカッコいい。錦之助の宇の吉は軽くてユーモラスな演技で芸の幅の広さを見せる。後半、心中者の男だった右近が追っ手のやくざの2役で見せる。

 「踊りと唄のグランドショー」は、お芝居が終って口上、物販のあとの休憩後にほぼ1時間。
 15曲ほどのほとんどが踊りだが、勘九郎と右近による唄もある。前半は若衆姿が多く、電飾衣装を使った派手な踊りもある。後半になってようやく女形の踊り。京之助は黒い着物の年増で、錦之助は洋髪のしゃきしゃきと生きのいい女性を踊り、勘九郎は女の激しい情念を噴出させ、右近の女形は振るいつきたくなるような美人だ。
 ラストは、京之助・錦之助・勘九郎・右近による「お梶藤十郎」。唄は島津亜矢の「お梶 〜『藤十郎の恋』〜」かな。はじめの2コーラスが京之助(藤十郎)・錦之助(お梶)と勘九郎(藤十郎)・右近(お梶)で、あとの2コーラスでは藤十郎とお梶の役を交替して踊るという早替りが楽しい。

 6年3ヶ月ぶりにこの劇団の公演を観た。博多新劇座での公演は今月1日から30日まで59ステージ。博多新劇座は前から5列目までが指定席で別料金がかかる。その指定席に少し空席があった。冬だし、夜の公演のほうが動員的にはたいへんのようだ。


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