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院長不在で副院長(院長の息子)と大学からの派遣医しか医者がいない病院に、救急患者が運び込まれるパニックを描く。まず、いかにもありそうな状況設定がいい。
盛多直隆の戯曲は、芸術的な高みをねらった作品ではないがよくできていて、なかなか面白いストーリー運びをテンポよく進める。
医者、看護婦、患者と多彩な登場人物の個性もうまく描き分けられているが、やや類型的なところが残るのは、コメディタッチの作品としてはしかたないか。しかし、その日常語のセリフは生きがいい。
それを受けて俳優も生きのいい演技だ。全体の統一に欠ける養成所の発表会的な雰囲気はあるが、やっていて楽しそうなのはいい。なぜかときどきポイントを外して、作者がねらって仕込んだ笑いがけっこう不発で、消化不良気味なところもあるが、まあしかたないか。
結局、待っていた院長は外で交通事故に遭って患者として運び込まれてくる。院長を待って手術を予定していたヤクザは怒り出す。よくぞというような設定がさらにエスカレートする。とても治療できる状況とは思えないのに患者は死なないのもコメディの所以か。
単純なハッピーエンドではないが、パニックを乗り切って登場人物も変わる、というのもこの場合わかりやすくていい。楽しめた。