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《2001.7月−2》

中川家の何が違うのか
【ザ・中川家(吉本興業)】

6日(金)19:00〜20:45 吉本ゴールデン劇場 入場料\1,500


 福岡吉本の常設劇場である「吉本ゴールデン劇場」にはいちど行ってみたかった。勤め先のビルの隣と言ってもいいくらい近いのでいつでも行けるのだが、地元の芸人だけの公演にはそれほどそそられない。今回、テレビで偶然見て面白かった漫才コンビの中川家が出演するので見に行った。

 劇場は、博多駅と隣接した交通センターの6階のゲームセンターの一角にある。1列15人が10列で座席は約150席だが、立ち見のスペースが若干ある。週5日の公演だから月20日以上やっている。
 今回の公演は人気が高く、10日前にコンビニでチケットを取ろうとしたが、座席指定が取れず立ち見になった。劇場が狭いので立ち見でも舞台が遠いことはない。天井はコンクリート剥き出しで居心地のいい空間ではないが、客席は若干のスロープがつけてあり見やすくはなっている。観客はほとんどが若い女性のグループだ。

 今回の出演者は、大阪からきた中川家のほかは、地元の華丸・大吉、バッドボーイズ、フリーク・ザ・グッドの3組の漫才コンビだ。
 フリーク・ザ・グッド、バッドボーイズはいずれも若手の男性コンビで、自分の生活ぶりをネタにそれなりに笑わせるが、観客をぐっと引きつけるところまではいかない。題材が日常的に過ぎて陳腐で、発想も貧困で、テンポも切れ味もよくなくて跳ばない。

 久しぶりに見る華丸・大吉は、父が高校生の息子を寝かせるために羊を数えてやるが、山羊が出てきたり、かばが出てきたりのネタで笑わせる。生活の断面をズームアップしたナンセンスギャグで観客をうまくつかみぐっと引き込むのはさすがで、NHKの爆笑オンエアバトルで人気がでてきたのもわかる。

 中川家は、ストレスで太った弟の礼二と、なんとも頼りなげな兄の剛の組み合わせが絶妙で、でてきただけで面白い。今回の漫才は博多のラーメンの話などの即興のネタのせいか砕けすぎていて突っ込みも弱く、かけあいながらしつこくこだわって観客を引っぱっていくというこのコンビの持ち味があまり出ておらず、迫力も不足で不満だ。しかも漫才は1回だけであとは他の出演者とのトークと観客とのQ&Aで、もう少し漫才をやってくれたほうがいい。

 中川家を見ながら、かれらがなぜ面白いのか考えてみた。

 礼二がストレスで太ったから売れたとのことだが、まず組み合わせの妙がある。剛は、そこにいるだけでなんとなくおかしい地の面白さを武器に、やんちゃ坊主のようでいながらほんわかとしたところもある礼二の、性急で強気な突っ込みをストンと落とす。それをテンポよく積み上げていく。
 ネタは、身近な話題であっても、意地悪の視点で切り取り、偽悪をまぶしていて、ううんと唸らせられるような発想の面白さがある。

福岡吉本は、華丸・大吉、コンバット満、ケン坊田中、高田課長など、タレントとしても活躍しているレベルの芸人が育ってきているのは楽しみだし、かれらを身近に見られる常設劇場があるのもいい。どうしても見たいと思うようなレベルの全国区の芸人が早く出てきてほしいと思う。


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