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《2001.7月−9》

たいくつした
【乗り遅れた夜明けに (トム・プロジェクト)】

作・演出:ふたくちつよし
17日(火) 19:00 西鉄ホール プレゼントチケット


 辰巳逐郎のひとり芝居だが、感想を一言でいえば、「たいくつした」。
 ひとり芝居の片方の極に独白劇の白眉「審判」があり、もう一方の極に形態模写的な面白さで見せる「イッセー尾形」があるとしてこの作品を位置づけると、いずれにも徹しきれない中途半端さが残る。

 この芝居のように、対話の相手が登場しないだけの芝居を単純にひとり芝居と言っていいのかわからない。さらに、それでもなぜこの作品がひとり芝居として書かれなければならなかったかがわからない。
 結果、ひとりの出演者で背後の広い世界を感じさせようとした意欲が、実際の舞台においては空回りしていて、作品のテーマが十分に表現されてはいない。

 早暁の郊外の駅のホーム、電車を待つ主人公に対し、駅長、熊谷さんそして妊婦が相手として登場するが、なかなかうまく想像力を刺激してくれない。演技も硬くテンポもわるく、しっとりとした魅力にも乏しい。

 全体が、隣の駅で事故で死んだ主人公の夢であるという構造で、結果的にはそれなりの伏線はあるが、しっくり来ず違和感が残る。
 その構造が明確になって家族への愛を語る最後の15分間だけの芝居で、それまでの展開はほとんどない。面白くなるまであくびをかみ殺しなんとかがんばろうとしたが二、三度ならずうとうととしてしまった。

 辰巳逐郎の持ちネタにしようとするのなら、全体構成からもう一度練り上げるしかあるまい。


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