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《2001.7月−11》

ことばの魅力にが乏しい
【Endress Speaker (山下晶と(仮)12人の会)】

作・演出:山下晶と(仮)12人の会
22日(日)19:00 HIGH BEAM 2000円

 21日土曜に会場まで行こうとしたがチラシの地図ではたどり着けず、会場に電話したら番号なしのテープで追い払われ、公演の事務所に電話したら留守電で追い払われ、会場がわからないのではどうしようもなく結局あきらめて帰った。
 会場は通常演劇公演が行われることの非常に少ないところなのに、チラシの地図が大雑把で使い物にならない上、バス停からの案内も一切なしという不親切さで、一見の客など来るなといわんばかりだ。22日に事務所に電話してやっと会場の場所はわかったが、応対は決して親切ではない。
 不愉快な気持ちのままの観劇となった。

 作品は、独房の囚人3人が壁を叩いて話をするが、雑草と脱走を間違えて混乱するという話で、4年前の初演から山下晶以外の役者を変えての再演という。
 山下晶以外の役者は河原新一と権藤昌弘で、3人とも5月の轍公演「連鎖街の人々」で見ている。河原のボーイ長陳に山下の今西社長役だったが、逆の方が面白いと思うというのはかつて「連鎖街の人々」の感想で書いた。
 陳を演じた河原の芸の幅の広さは今回全く違うキャラクタをうまく演じていたのでよくわかった。「連鎖街の人々」では若干遠慮していたと思われる山下は今回十分に演じきっていた。権藤は役のせいでもあろうか、持ち味の生真面目さが前面に出すぎていて硬いが、それを切り捨てきれれば圧倒的に面白くなろう。

 役者は一応そろったが、残念なことに戯曲のできが悪い。初演から大幅改定してもよかった。
 壁を通した音での会話というアイディアはいいのだが、エピソードが単調なのとことばの魅力が乏しいために、深みがなく広がりが出てこない。
 エピソードの単調さはたったひとつの間違いだけで全編もたせていることだ。さらにうまくエピソードをからませた方がいい。でないと同じようなセリフが繰り返されることもあり興味を繋ぎとめ切れない。
 ことばの魅力が乏しいというのは、会話の中にウィットに富んだセリフ、切れ味のいいセリフが少ないことだ。これがうまくいっておれば囚人の個性もさらに際立ったかと思う。

 題名の「Endress Speaker」の「Endress」をどう訳していいかわからない。「Endless」の間違いではないか。こんな変なところも気になった。
 いろいろ不十分だと思うのはプロデュース公演だからかもしれないが、公演を打つからにははじめに書いたようなことも含め、もう少し観るもののことを考えるべきだと思う。


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