生田晃二の戯曲に注目しながら観た。
ショーマンシップの本拠地である唐人町に関わる甘棠館を書かねばならぬという熱意が、藩校・甘棠館に関わる人々を生き生きと描き出している。
第1回甘棠館祭り記念公演と銘うたれた今回の公演のため、亀井南冥・昭陽親子や当時の藩や幕府のことがよく調べられ、それらをうまくドラマ化し、楽しめるレベルに達している。
甘棠館の亀井南冥・昭陽親子の、修猷館校長の竹田正良との友情、弟子たちとの交流を通し、時勢と戦いながら生きた生き様が語られる。南冥の、甘棠館の開校から、寛政の改革から徂徠派が疎んじられて蟄居させられ亡くなるまで、ポイントを外さずわかりやすく描く。甘棠の樹の精霊である花梨を狂言回しにし、しかもユーモラスにストーリーにからませることで、歴史劇としての堅苦しさをなくす工夫も、この劇団が狙った楽しい芝居作りに効果を上げている。
欲を言えば、人格高潔で豪放磊落と人格的に完成され余りに悩まない南冥像だが、悩んでそれを乗り越える南冥像まで描ければさらに魅力的になったと思う。そのあたりは、今回が「南冥シリーズ第1弾」ということだから、次回以降に期待しよう。
戯曲と演出の充実度に比べ俳優の演技には不満が多い。
花梨の高橋知美はベテランらしく楽しませてくれたが、小塩泰史は硬くて南冥の豪放磊落さは十分出ていない。
全体的に言えるのは、セリフの切れが悪く、メリハリがないことだ。
パンフに書かれた座長のあいさつをみても、劇団ショーマンシップはすっかり唐人町に根をおろしたようだ。さらに、地域にこれだけ根を下ろした劇場は九州にはない。その自信が座長に「本気」という言葉を言わせた。
自転車で通って、商店街も劇場も劇団も、大いに楽しみたいと思う。