「エリザベート」は、ウィーンでロングランを続け、ヨーロッパ各国で上演されている人気ミュージカルだ。宝塚歌劇でも上演されているし、今回の東宝制作のミュージカルの人気は東京でも高かった。きょうの博多座も、満員御礼で立見が出ている。
確かに、よくできていて楽しめる。「エリザベート」に対応して「死の帝王」トートを配することで、「エリザベート」の「愛」と「自由」を「死」の世界から照射する。生オーケストラなのはいいし、みごとな装置を劇場機能とあわせに実にうまく使って、見応えがある。
しかしそれでも、観ながら「オリジナルとはちょっと違うんじゃないか」と思わせられるところが多々ある。
その違和感は、東宝ミュージカルの演劇としての甘さが感じさせるのだが、どこにそのいちばんの原因があるかということになると、脇の俳優の甘さではないかと思う。
俳優の甘さとは、鍛えられていなくて切れが悪いということだ。
山口祐一郎は歌をマイクに頼りすぎで一本調子で大味だし、高嶋政宏はせりふのところの演技はまあいいが、歌と踊りはミュージカル俳優としては不満が残る。他の準主役クラスも同じような感じで、印象的な歌や踊りが少なすぎる。
その次のクラスの、宮廷の人たちを演じた中堅俳優になるとさらに、しゃべり、歌、踊りの訓練不足をさらけ出していて、かれらの登場場面の締まりのないことおびただしい。観ていて楽しめない。コーラスの人たちの方が圧倒的に動きがいいし、歌もいい。
劇団四季で上演したとしたら、たぶんこうはならないだろう。
その演技の質から、ミュージカル俳優の層の薄さを感じさせられてしまった公演だった。