後藤香の二役は堪能した。
しかし、その二役の状況を無理に作っていると思わせられるところがあり、うそっぽいところを放置したままで、脚本が生煮えの分、共感が薄れた。
姉ケイコ(後藤)の恋人タカユキに会いに行った妹ヒサコ(後藤の二役)が、セクハラを告発したハッキングの犯人探しを命じられたタカユキを、姉ケイコになりすまし知恵をつけ励ます。後藤による、地味過ぎるくらいの姉とおきゃんな妹との繊細な演じ分けは楽しめる。
しかし、部長を説得に行ったタカユキは、青森転勤を命じられてしまう。そこで妹になりすました姉が登場し、妹のカード破産の過去や姉(すなわち自分)の結婚願望をタカユキに話す。ここはむしろわざわざ姉が妹を演じる必要があるのかという感じだ。
その間妹はタカユキの株を上げることに奔走し、青森転勤も取り消されプロジェクトのリーダになり、ハッピーエンドとなる。それらの外の状況は主に携帯電話で知らされることになるが、その多用も気になった。
そのようなやりとりがあっても、部長の所に行く前と後でタカユキは変わったようには見えない。タカユキとケイコの関係も、状況は理解できても愛が深まったというようには見えない。
それは脚本が整理されていないためだ。くどくどとしはっきりしないセリフと、揺れ動くだけでなく後戻りまでする状況がじゃまをしている。
以上のように、せっかくの面白い発想が、結果としてうまく生かされていないのが残念だ。