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《2001.10月−10》

女優の魅力たっぷりの舞台
【浮気の終着駅 (ばぁくぅ)】

作:ニール・サイモン 訳:安西徹雄 演出:佐藤順一
24日(水) 19:00〜21:20 アトリエ戯座 2000円


 個性的な3人の女性を演じる3人の女優の魅力に溢れた、楽しめる舞台だ。

 中年男バーニーの浮気計画の一人目の相手であるエレインの坪内陽子は、きれいすぎて廃頽的という感じには少し欠けるが、バーニーのたてまえばかりの議論にたいくつし、本音が言えないもどかしさをうまく出していた。

 二人目の相手であるボビーの青木あつこも、はちゃめちゃのヒッピー娘を演じて、バーニーが浮気どころではなくなるのを納得させてくれる。

 三人目の相手であるジャネットは、バーニーの友人の妻で鬱病だ。互いに浮気願望がありながら、互いの「誠実」にこだわり、妻への「誠実」に立ち返ったバーニーの本気の説得で、夫への愛に目覚め鬱からの脱出のきっかけをつかむという、けっこう難しい役だ。
 その幅広さが要求される役を、中野弘子は違和感が全く感じられないレベルで演じていた。7年ぶりの舞台というが、こんなうまい女優がいたのかという感じだ。

 バーニーの佐藤順一は、福岡でこの人以上のバーニー役者があるとは思えないが、それでも受けの演技のせいもあろうかやや硬く、本音とたてまえの微妙なところを行き来する表現には若干の不満は残る。
 というのは、佐藤順一のうしろに、もっとメリハリがあり、もっと幅広い、もっとユーモラスな加藤健一がちらついてしまって、あまり素直に佐藤順一を見られないところがあったからかも知れない。

 演技以外についても、装置、衣装、照明のレベルは高い。
 このレベルの質の芝居を見せてくれるなら、必ずしもオリジナルにこだわらなくてもいいか、そんな劇団が福岡にあってもいいかという気にもなる。
 この作品は客席70ほどの戯座アトリエで8回公演だが、もっと観客が増えてもいいと思った。


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