死に人街での人体再生などとおどろおどろしい形をとりながら、テーマは比較的シンプルで、見かけとは違った突っ放したようなクールさも併せ持つ芝居だ。
百色眼鏡(まんげきょう)とは、死の世界から覗いた生の世界の明るさ、多様さ、楽しさを象徴している。
死んだ姉の人形に導かれて死に人街に来た青年が、再生された姉に出会う。姉は青年を逃がそうとするが、死に人街の支配者・ドクターに見つかり殺されてしまう。それに、ドクターの手下がからんで、死に人街での人体解体と再生の話が展開する。
ストーリーはわざとぼかされたり、セリフも演技もデフォルメされていたり、人間に対応した人形が象徴的に使われていたりと、一見論理を無視して大きな振幅だけをねらったような作りだ。きっちりした構成にこだわらず、脇道にそれても気にしないように見える。
演技も、タイミングを外したり極端なまでに引き伸ばしたりして、叙情的に人物の気持ちを強調する。役者も大変だが、白けさせることなくこなしている。
プロローグで死に人街に来た女性を、死人の象徴としての人形ぶりと仮面で表現するような演出も面白い。ドクターが手下を銃殺する場面では、それらしい音と火花が出るピストルを使っていた。
エピローグで青年がドクターの後釜となっていて、プロローグで登場した女性が再生されて、その青年と結婚する。百色眼鏡の向こうの生の世界への旅立ちで終る。
今回の公演は九州大学演劇部主催の特別公演で、会場が学生会館のため、21時の閉館に間に合わせるためにカーテンコールも中断したくらいだった。
南新地が役者として出ていないのがさびしい。
以下余談ですが、
きょうの毎日新聞の「ひと」欄で、NHK「クローズアップ現代」の国谷キャスターが言っている。「もやもやを言葉にすると問題が見えてくる」そして「最初にそのテーマについて感じたり思ったことを大切にします」と。
この感想についてもそうには違いないが、言葉にするのはけっこう大変だ。しかしどうひねくりまわしても結局は観たときの印象でほとんど決まってしまう、というところまで似ているかなと思った。