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《2001.11月−5》

げんきいい!!
【タイプ。 (藍色りすと)】

作・演出:太田美穂
9日(金) 19:30〜21:00 あじびホール 1500円


 元気さではちきれんばかりの舞台だ。それほど広くもないあじびホールの舞台だが、それがいつもより更に狭く見えるほどだ。しおらしい劇団名と、劇団員が女性中心ということにだまされてはいけない。
 演出の切れ味も負けてはいない。ダイナミックな演技をダイナミックな場面転換が支える。かなり荒削りではあるが、けっこう迫力がある群舞や突然の劇中劇などの仕掛けも十分だ。

 パソコンの中の世界に思いを仮託するという話だが、面白いのは、コントロールが利かなくなって本人自身がその世界に入っていくこと。その世界では陽(秩序)のグループと陰(無秩序)のグループが争っている。
 陰のグループの首領・里見に、主人公のパソコン上の分身・カナエも、はては主人公・ひかりも恋してしまう。カナエもひかりも陽と陰の間で揺れ動くが、それはわれわれの生活の、何の変哲もない息苦しいばかりの日常と、やや廃頽的で魅力的な非日常の間を揺れ動く様を象徴している。

 里見を陽の世界に対応するものとして、コンピュータ・ウィルスによるバグの申し子というには余りに魅力的に描いているが、その表現がいかにも宝塚歌劇の男役風というのが面白い。結局はバグが直り、パソコンが狂いだす満月の夜は来ず、里見は死んでしまうのだが。

 この劇団は今のままでも十分楽しめるが、持ち味である元気さは堅持して、さらに練り上げられ、切れ味がよくなったら、もっと別の迫力が出てくるのではないかと思う。そういう面も期待したい。
 今回の舞台についてあえて言えば、おおもとの発想がやや常套的なのと、表現は多彩だが必ずしも斬新というわけではない。そのあたりを克服した、もっと知的なもっとスマートな表現を期待しなくもないが、それがこの劇団の魅力を殺してしまうことになるかもしれないという不安もまた残る。


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