大きなストーリーはあるが、連発されるギャグが面白く、存分に楽しませてくれた。
コメディというより、バラエティショーに近いが、ここまでくだけているのは福岡では初めて観た。似たようなものを探せば、山口良一などがやっている、東京ヴォードヴ ィルショーのユニット「花組エキスプレス」のシ リーズ「あほんだらすけ」とか、初期のWAHAHA本舗の雰囲気だ。それも、その即興性とコントのレベルにこだわらないことでもっとくだけている。
マッチ作りの女からマッチを買って、自身のアイデンティティのために、ボクサーのアパートに火をつけた消防士。焼けた部屋の押し入れにいた押しかけ女とともに棲家なしになるボクサー。この2組の男女のからみがメインにあるが、俳優の地がもろに出ているところが多いから、その状況にそれほどこだわってはいない。
全然くだらないのまで含めて、状況にあまり関係なくギャグは繰り出される。特に間断なく続く前半が面白い。くじで引いた食い物の早食い競争など、ギャグ以外の趣向もふんだんに盛り込まれる。
後半はストーリーが顔を出し、ギャグが減って少しテンションが下がるのが残念だ。
俳優はみな個性的なキャラだ。そして、普通だったら白けてしまうようなギャグも勢いで突っ走ってしまう。テンポ、俳優のからみもいい。
押入れの女の藤田希は、強引だが明るい個性で、何をやっても許される雰囲気で全体を引っぱる。
男の藤田正年と、マッチ作りの女の松本涼子もいい味を出している。
客演の劇団池田商会の寺本純が、生きがいい演技で見せる。伊吹満に似ていてかっこいいし、軽くて軽くて、動きがよくていい切れ味だ。劇団池田商会の公演で見つけたというが、さすが。
狂言集団もんぜんバライはこれが最終公演というが、メンバーにはぜひとも活動を続けてほしいと思う。