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《2001.11月−13》

幽霊頼みも、不発
【金木犀が香る頃 (K2T3)】

作・演出:後藤香
24日(土) 16:00〜17:45 ぽんプラザホール 1500円


 構想が弱いところを小手先でカバーしようとするのか一見テンポよくみえるが、ストーリーは迷走していて、突っ込みが弱くて味わいも薄く、ありきたりの作品となった。
 その中でも新山学や後藤香の魅力的な演技はあるが単発で、とても全体の面白さにまで繋がらない。

 前作「秘密の花園」では幽霊をうまく使って成功していたが、この作品では幽霊は観客には幽霊とわかった上で、舞台に出ずっぱりである。
 ここまであからさまにやられると、幽霊に食傷してしまう。

 設定された状況が理解し難いが、これは最後まで行ってなぜかがわかる。
 理解し難いというのは、例えば、娘が結婚詐欺に遭いそうだというくらいでいちいち天国から来ていたんじゃ(おまけにアシスタントの幽霊までついてきて)、この世は幽霊だらけだ。
 さらに、詐欺師・大木はなぜあそこまでして結婚詐欺する必要があるのだろうか。結婚費用の持ち逃げが目的なら、仕込みに手間がかかってあまりコストパフォーマンスがいいとはいえないのになぜ?
 また、潤一郎一家が大木を信じて疑わないのはなぜ?

 そのようなところから、全体が、作者のではなくて登場人物のだれかのフィクションなのだと気づくべきだったかも知れないが、勘の鈍い私には最後まで考えもしなかった。
 従って、最後に、それまでのストーリーが潤一郎の小説だった、として突然に入れ子構造になるのは、えらく唐突に思えた。しかし単純な肩透かしで、衝撃はない。そう、最後にわかっても時すでに遅しで、無理したストーリーのつまらなさは解消されず、いままで見てきたのは何だ?とまったく中途半端な気持ちのままだ。
 無理に小説であったことを認めたとしても、くらだん小説だと思うだけだ。

 作者の意図は、どぎつさを避けて、娘の結婚を喜ぶ夫婦の思いをしみじみと描きたかったのかな、などと思ったが、その視点から見ても意図した面白さは出ていない。

 このような印象をもったのは、このごろ、「ライオンキング」や「機械の見れる夢がほしい」など構成力抜群の作品が続いているせいもあって、不満が増幅されたからかな。

 初日の16:00からの公演を観たが、客席が半分ほどしか埋まっていないのも気になった。


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