「たいこどんどん」はその初演を、今はなき渋谷の東横劇場で観ている。そのときの幇間・桃八役は、なべおさみだった。そのときの印象が強く、こまつ座や前進座での上演は観る気がしなかった。
それが今回、市民劇場12月例会で、25年ぶりに「たいこどんどん」を観ることになった。
「たいこどんどん」は、野放図とも言えるストーリー展開で収束せず発散し、開き直ったようなやや荒っぽいところが魅力の戯曲だ。
幕末、幇間・桃八と若旦那・清之介の9年にわたる東北流浪の話だ。やっと帰ってみたら江戸はなくなって東京に変わっており、清之介のお店もなくなっていた。
その戯曲に、前進座らしくものすごくまじめに取り組んで、楽しめる作品にしている。特に前進座の総合力をうまく引き出した演出がみごとだ。
この舞台の醍醐味はまず、変に省略しないでちゃんとした扮装で形を整えた楽しさにある。例えば、山賊達の個性的な衣装、メークには笑わせられる。その首領は荒事の扮装に荒事の演技だ。
次に、集団演技がいいこと。下駄タップなどの群舞も楽しめる。
ていねいだからさらりとはしない。メリハリありしつこく迫る。見せ場が若干テンポを悪くするところがあるのは、まあしかたないか。
ただ、口舌は必ずしもよくなくて、言葉遊びの軽妙さが出ていないのは惜しい。それと、歌がそれほどうまくないことも。
俳優はみな個性的でバラエティに富んでいる。女優など美人は少ない。その組み合わせが場面の奥行きを深くしている。
主役2人についてはよくやっているが、すこしシビアに言えば、桃八役の矢之輔はにじみ出てくる生来のユーモアがなく、作ったユーモアで硬い。そのため、清之介との対照の妙が弱かった。個性からいえばむしろ梅雀で観たかった。
若旦那役の國太郎は、裏声中心の女形のしゃべりで、セリフが聞きとりにくいのが気になった。歌もあまりうまくない。
福岡市民劇場は、ももちパレスが廃止の計画があるとのことで、廃止反対運動を展開している。
確かにいい施設は少なく、演劇ファンとしてはももちパレスが廃止されると市民劇場例会のみならず他の公演も条件の悪い会場でしか観られないことになる。反対運動を支援していく必要があろう。
福岡市民劇場 2002年 例会作品 (会場はいずれも ももちパレス)
2002年の例会予定が発表されたので、参考のため以下に掲示しておきます
興味のある方は 福岡市民劇場 (092-771-8671) へ問い合わせて下さい