猿之助門下の若手によるこの作品は、そのスピーディな展開と多彩な仕掛けが面白く、大いに楽しめた。
約1時間の上演時間の中に、いろいろな要素を詰め込んでいて、歌舞伎には珍しくまったく退屈するひまがない。
蜘蛛の精が化けた女人国で、子母泉の水を飲んだ猪八戒が孕んでしまったのを助けるまでが三分の一、蜘蛛の妖怪にやられて窮地に落ちるまでが三分の一、残りの三分の一が妖怪退治だ。
きれいな女王が蜘蛛の妖怪になるところなど見せ場は多いが、特に面白かったのは孫悟空の分身の術で、16人の子供による分身が登場する。実にかわいく楽しい踊りだ。
立ち回りも迫力で、妖怪の手下は約30人も登場する。
音曲は、義太夫と長唄を揃え使い分ける。中国風の衣装に銅鑼の音を使った中国風の音楽もあり、異国情緒もたっぷりだ。
右近の孫悟空は動きがいい。やや迫力のある春猿と笑三郎が妖怪で、女形で見たかった笑也が三蔵法師だ。大勢の若手の動きがいいのもいい。