徳満亮一の台本も金子みすゞの短い生涯の激しいドラマをうまく捉えていて評価できるが、特筆すべきはそれをとことんまで膨らませた佐藤浩史の演出力だ。プロの演出家の実力をとことん見せつける。
福岡の演出家が演出していたら絶対こうはいかずずっこけていたな、と思わせるシーンがいくつもある。
その演出の特徴は「ひっぱること」。じわじわとしか高まらない感情にあわせて、しつこいくらいひっぱる。ふつう我慢しきれず切ってしまうところを、それぞれの人物の思い入れをむりやりに強調して、最後まで吐き出す。それでいて白けさせない。
ひとによって好き嫌いはあろうが、商業演劇の常套的な演出法だ。
スター芝居や歌手芝居に多いそのような演出を、プロとはいいにくい地元の俳優に適応して成果をあげているのがいい。
装置、照明、音響を駆使して、形から入り最後まで形で押しとおすから、演技にもきめ細かさや飛躍よりも形になることが求められる。ことしさんざん不満をぶちまけてきたテアトルハカタの女優さんたちが見せる演技をしていたのは、この形優先の演出のためだ。
ということで楽しめた。博多座オリジナルの心意気が伝わる。
19日にチケットが取れずきょうにしたが、満員御礼だ。博多座の組織力からすれば3ステージは少なすぎるかなという気もする。
12月は市民檜舞台の月だが、博多座の前を通ると閉まっていることが多いのは寂しい。このようなのは演目替わりの月末月初にやって、12月は師走らしい1ヶ月公演をかけてもらったがいい。