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《2001.12月−13》

派手な小劇場スタイル+商業演劇のサービス精神
【ポセイドンの娘 (SAKURA前戦)】

作・演出:石井亮
21日(金) 19:00〜21:20 NTT夢天神ホール プレゼントチケット


 ど派手な照明と大音響と群舞いう一時期の派手な小劇場のスタイルに、満足させるまでしつこく迫る商業演劇のサービス精神を詰め込んだ、という芝居だ。
 その派手さを支えるドラマには骨格があり、ていねいにな描写もあって、ど派手な照明や大音響にも負けてはいない。やや子供っぽいところが少し不満ではあるが。

 アンデルセンの「人魚姫」をモチーフにしており、6年前の船の遭難で死んだ美砂が死神によりこの世に出てくる。美砂のかっての恋人・洋平の今のフィアンセ・いのりは、4人の死神のリーダー・カナメの妹だ。
 男女の情愛、嫉妬と、姉妹の情愛、嫉妬を徐々に明らかにしながらストーリーは展開する。それぞれの人物の本音が現れて、最後に誤解は解け、洋平といのりは結婚し、カナメと美砂は天国へ昇る。

 ファンタジーではあるが、負の世界である死神をていねいに魅力的に描いていて、その思いにリアリティをもたせるところまで行っているのがいい。
 それぞれの人物の持つ矜持や独占欲やこだわりが影響しあっていて、それがストーリーにどう影響しているかについては、わかりすぎるほどに書き込まれている。わかりすぎることが商業演劇的とも見え、それが不満に思えるくらいだ。

 そのようなストーリーの叙情性とともに、かっこいいアクションと踊りが違和感なく並存していて、楽しさは倍増する。踊りはユーモラスな振付もあり楽しめる。
 俳優はみな個性的で、演技のレベルも高い。

 このような劇団、福岡ではやっと出てきたかという思いだ。
 つかこうへいの洗礼を受けておらず、平田オリザはおろか野田秀樹や鴻上尚史の表現方法も他人事という超近視眼の福岡の演劇界で、15年遅れではあるが、自力で派手な小劇場スタイルまで行き着いたことはすばらしい。
 このスタイルを、テーマはさらに深く、表現はさらに切れ味よくダイナミックにブラッシュアップして、本格的なエンターテインメントとして楽しませてほしいと思う。

 このような芝居私は大好きだが、その面白さが知られてきて、公演ごとに倍の観客増という。第4回公演にしてNTT夢天神ホールで7ステージ、1500人以上の観客動員はすごい。


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