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《2002.1月−1》

単調さの原因は・・・
【スクリーンいっぱいの星 (フラッシュアップ福岡)】

脚本:高橋いさを 脚色:上九条アキラ 総合演出:西条貴史 演出:美里菜月
12日(土) 13:00〜15:00 アミカス4階ホール 2000円


 高橋いさをの作品では、この「スクリーンいっぱいの星」の原作である「けれどスクリーンいっぱいの星」をその代表作とする「豊かな演劇シリーズ」は観たことがなく、今回の観劇ではその荒唐無稽さが新鮮だった。
 しかし、劇団「銀色のくじら」の別ユニット「フラッシュアップ福岡」の第1回公演であるこの舞台の完成度はまだまだで、不満も多い。

 登場人物の内面の葛藤を表す役割の別人のダッシュが生み出されて、男3人と女2人の登場人物に対応する5人の「アナザー」が勢ぞろいする。この5人が「イノチュー菌」を撒いて地球を乗っ取ろうとするが、「アナザー」の弱点の醤油で対抗してやっつける、というストーリーだ。
 ダッシュを生み出した「超虚構(メタフィクション)」を遊んだ登場人物は、男2(アパート管理人で5人のキャップ)が女2(聖書販売員)とデートの約束をしたという台詞で「超虚構」の世界から戻る。

 今回の上演は台本をきれいになぞるという上演ではなくて、各出演者の見せ場を作るためと思える改編がなされているようだ。
 荒唐無稽ななかにも高橋戯曲らしいしっとりとしたところもあるだろう原作の味わいは弱められ、さらになぜかこの作品の「超虚構」という構造も弱められてしまったように思う。

 出演者は元気がよく魅力的だが、全員がいかにも「われもわれも!」という感じの絶叫調のせりふまわしで、テンションが上がりっぱなしだ。その結果、メリハリがほとんどない単調な仕上がりになってしまった。
 幅広い演技までは要求しないがせめて押さえた演技ができれば、高橋いさをの戯曲の魅力をもっと引き出せたはずだ。

 それにしても原作から題名まで変えてしまっていいのだろうか。原題から「けれど」を取るという発想が、この作品の単調さの根本的な原因のように思えてならない。


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