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《2002.1月−2》

姉妹の情愛をうまく描く
【LOVE MAIL (T・M・B)】

脚本:兼松陽子 演出:平原美歌子
13日(日) 18:00〜19:40 NTT夢天神ホール 1500円


 メール魔女が3つの願いをかなえてくれることになって、生後すぐに亡くなった妹を生き返らせるという話だ。
 ちょっとありきたり過ぎる発想だが、姉妹の情愛をうまく描いているところがいい。

 主人公・恵美の妹・愛が登場するまではたいくつだ。友人や家族とのやりとりでは、時間かせぎとも思えるどうでもいいせりふが多すぎてイライラしてしまう。
 しかし、願いがかなって妹・愛が登場するとがぜん面白くなる。その登場で、一挙に鮮やかに妹のいる別世界へ連れて行ってくれる。エイクボーンの「ドアをあけると」で、時間が飛んで新しい世界が開かれるときの新鮮な印象を思い出した。

 けっこうぶっ飛んだ妹にとまどい反発しあったりしながらも通いあう情感をうまく描いてはいるが、ちょっとエピソードが簡単すぎるかなという気はする。
 妹の友人たちは個性的でいい。あて書きだろうかそれぞれうまくはまっており、特に高市恵子演じるドンの強烈なキャラクタが何とも面白い。

 で、そのままの幸せが続くという結末でもいいのだろうが、ここでは定石どおりもういちど現実に引き戻す。そのやり方がなんともとってつけたようで不満だ。
 妹は病気で死ぬのだが、わざわざベテラン魔女が登場してその生まれ変わりを約束する。妹が死んで、妹がいなくなった世界に戻ったら、そこに妹の生まれ変わりの従妹・愛が誕生している。
 しかし従妹・愛は妹・愛の死より前から母親の胎内にいたわけだし、生まれ変わりの説得力は弱く納得がいかなかった。工夫の余地があると思う。

 装置や照明がよく、この作品のスマートさを支えていた。
 チラシが安っぽくセンスがないのが気になった。その舞台並にスマートにした方がいい。


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