1930年代のニューヨーク、天才演出家・ジュリアンの新作ミュージカル「プリティ・レディ」の上演の物語だ。ニューヨーク公演を目前に主演女優・ドロシーがケガをし、新人ダンサー・ペギーが36時間の準備で主役の代役をなしとげスターとなる。
ドロシー役の前田美波里が、恋に悩む大スター・ドロシーを演じて圧倒的な存在感を見せる。
派手なコスチュームに包まれたみごとな肢体を見るだけでうっとりさせられる。踊りが下手なスターという設定で踊れないのがかわいそうなくらいだ。
出ずっぱりであるペギーの涼風真世はタップも歌も達者なところを見せる。代役を決心し主役の舞台を作り上げる後半をじっくりと見せる。彼女のナンバー「42nd Street」は聴かせる。
演技も踊りもいいし愛くるしいし大好きなんだが、前田美波里と比べるといかにもこじんまりまとまっているという印象だ。だからスターになることの説得力がやや弱いように思う。前田の迫力に蹴散らされて、華やかさや才能が霞んでしまいそうなのがつらい。
ダンサーたちはいい。その生き生きとした群舞は迫力があり、歌の技量がもう少し上がればなおいいと思う。
「42ND STREET」のニューヨーク初演は1980年であり、2001年にリバイバルされた舞台はトニー賞のミュージカル部門のリバイバル賞を獲得している。
1997年に初演された今回上演の舞台がニューヨーク初演の演出をどこまで踏襲しているか知らないが、演出はメリハリがありテンポがよく楽しめる。生演奏なのもいい。