全体に渉る大きな仕掛けがあるというわけではないが、切れのいい小技が効果的で大変面白い作品になっている。知的な馬鹿馬鹿しさにずいぶん笑った。
柔道だけしかない十文字中也が、「プロ柔道」というマルチ商法に引っかかって作った借金と風俗で働く女・マリーのために「賭け柔道」をする。
その相手は、ロリータ柔道家、姑柔道家、そしてなんと中也の母親だが、体力勝負ではなく知力勝負の試合にマリーの手助けで勝っていく。最後はサイボーグになったライバル・九条にも勝って、マリーともハッピーエンドだ。
テンポのいいストーリーを遊泳するような、何とも軽いすっとぼけた人物像が面白い。
肩透かしの連続だが、それがけっこう心地いい。
例えば、「(大げさに)どこ行くの?」「トイレ!」なんて、他ではあまりお目にかからないセリフが新鮮に聞こえたりする。中原中也の詩はデフォルメするし、九条のいう大どんでん返しのはずの「マリーが九条の送り込んだスパイ」であったということがわかっても何ということもない。
そのあたりを実にさっぱりとやってのける。
人物が「セックスしたい!」ことを、股間を押さえて前かがみで歩くなど直接的に表現するのも福岡では珍しい。第三舞台時代の筧利夫が「バックン、バックン」とやっていたほど正々堂々というわけでもないが。
裸舞台で、軽くストーリーを運ぶ俳優の動きはいい。あまり鍛えられてはいないが、面白そうだと思ったことをいろいろ発想力豊かにやってみるという遊び心が面白さの源だ。
劇団196の旗揚げ公演ということもあり入場料は安く押さえられているようだ。「世界的電子網上WWW小劇場」の「適正価格決定委員会」風に言えば、「旗揚げ御祝儀込みで+700円して1200円でどうだ!」というところだろうか。