きっちりとしたみごとな脚本で見応えがあった。いい作品を選択した眼力にまず脱帽。
俳優は初舞台の人も多く高い表現はなかなかできていないが、荒削りながらも作品への熱意が伝わってくる舞台だ。終盤がみごとな盛り上がりをみせる。
モハン・ラケーシュによる原作は、紀元2世紀ころの劇作家で詩人のカリダスを描いた戯曲で、1958年に発表された。
カリダスと恋人マリカとの愛情とそれに支えられた創作活動がメインのストーリーだ。カリダスは突然宮廷に呼び出されて王に気に入られ一時期権力を手にするが、王の死で挫折する。
ふるさとに帰りマリカと再出発しようとするが、マリカはカリダスを毛嫌いする男・ヴィロームと子をなしている。
終盤、挫折して村に帰ってきたカリダスとマリカの延々と続く会話は圧巻だ。いったんは心が通じるがそれもつかの間、ヴィロームを加えた三角関係が露わになる。この現実的なヴィロームを荒井孝彦がいやらしくねちねちと演じていて面白い。
結局、カリダスは一人で再出発、マリカは子供に未来を賭ける。
この戯曲、ギリシア悲劇のような簡潔なセリフだ。マルカの叔父の死など、死体に泣き伏すわずか十数秒ですませ、よけいな表現がないのがいい。
しかしその簡潔なセリフが、慣れない俳優の動きに合わせたためにブツブツに途切れて韻律がなくなってしまったのが惜しい。特に一幕目は登場人物が多いこともありその傾向が強く表れた。戯曲の言葉のテンポを優先し、俳優の動きはそれに合わせた方がよかった。
音楽と踊りでインドらしさを出していた。インドで作ったというカラフルな衣装も楽しめた。
秋に予定されている次回作が楽しみだ。