「え〜ッ、こんなのあり?」というスタイルが斬新だ。追随者もいないようだから、このスタイルで鳥肌実は開発者利益独占状態だ。昨年12月の東京公演は、国立代々木体育館で9000人の観客という。
万歳翼賛会総裁・鳥肌実の仮想政治演説だ。ナチやアルカイダを称え、アメリカを徹底的にこき下ろす。それが演技か本音かわかりにくいという虚実のせめぎあいが新しい。演技なのだが本音らしくも聞こえ、その過激さに思わず引いてしまう。
そのスタイルもコンテンツも、赤尾敏の演説スタイルをデフォルメしたものと見えた。
かって渋谷駅前などで街宣車の上から演説していた右翼・赤尾敏は、何とも言えないうまい間合いと、強烈な自己投影がそのスタイルだった。そしてコンテンツは、革新も保守も本気で切りまくるその主張にあった。パフォーマーとしてはいい線いっていた。
鳥肌実は、真っ黒のスーツには「欲しがりません勝つまでは」などのスローガンが縫い付けられている。そのズボンは短くチンチクリンで、頭は短い髪にてかてかのポマード。
マイクに唇を着けっぱなしでしゃべるから、大音響の上に雑音だらけだ。ときどきひきつけたようなしかめっ面をする。
宗教の話、政治の話、息子の話を混ぜながら、大和民族の優位を説き、それを象徴する万歳を翼賛する。
大言壮語だし、悪口雑言のオンパレードだ。が、息子の話になると突然に自虐的になる。そのしゃべりは圧倒的に押し出しがいい上に間もよくて存在感があり、うまくはまったときの切れ味は心地いい。けっこう質の高いパフォーマンスだ。
観客は若い人のグループかカップルがほとんどだ。サンパレスの1階が満席だった。隣の席のグループは東京からの追っかけだ。
東京公演の模様は、このサイトからもリンクしている「演劇◎定点カメラ」に詳細に記述されている。その詳細さは速記録に近いようなレベルで、「まねきねこ」さんの頭の構造はどうなっているの?と思えるほどだ。