福岡演劇の今トップへ 月インデックスへ 前ページへ 次ページへ


《2002.2月−1》

絡み合う肉体が作る濃密さ
【明後日 (昭和54年)】

作・演出:鎌田貴嗣
3日(日) 14:00〜15:20 シアターポケット 800円


 劇団「昭和54年」の第3回公演で、密室二人芝居シリーズ第三弾にして完結編と銘うたれたこの作品は、その肉体も含めて人と人との濃密な関係を具体的に舞台で表現しているのが評価できる。
 「昭和54年」の芝居は「白夜」についで2本目だが、少し慣れてきたか、この劇団独特の舞台表現が面白かった。

 幕開き、密室で女を椅子に座らせ、男はアイマスクをつけ、大きな男根をしごいてオナニーをしている。女は愛を求めセックスをねだるが男は相手にしないなどのやりとりの間も、オナニーは延々と続けられる。そして突然赤ん坊の泣き声。男根をおったてたままの男の独白。そして男が出て行くと女は部屋の隅の容器の血を壁になすりつける。
 男が自転車に乗って再び登場する。床に敷いた布団の中あるいは上での、もどかしいばかりのやりとりが長々と続く。

 男は獣のような声で唸り、あるいは絶叫する。男と女は求め合い、互いの肉体を密着しあいまさぐりあいながらも結ばれることはない。肉体の満足だけで片付くようなものではない閉塞状況へのあがきばかりだが、切実さは出ている。

 死によってしか閉塞状況たる密室からの出発はできないが、それさえもできない。そのような哀切さを、正調五木の子守唄でさらに強調しようとするが、やや叙情に流れて却って印象を弱めてしまうと思ったくらいだ。
 この劇団の特徴は、俳優の肉体によるしつこく直截な表現であり、その表現方法にはさらにしつこくこだわってほしいと思う。

 私の観た回の観客は10人弱で、一般に受け入れられにくい芝居とはいえ少なすぎる。チラシはたくさん入っていたし、宣伝が弱いとは思えないのだが。
 風邪をひいてしまった。静かな芝居だから咳をするタイミングもない。我慢するのがつらかった。


福岡演劇の今トップへ 月インデックスへ 前ページへ 次ページへ