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《2002.2月−3》

花緑の表現力◇華がある
【花緑ごのみ 新春落語ライブ (柳家花緑独演会)】

構成:柳家花緑
8日(金) 18:30〜20:45 イムズホール 3000円


 かなりオーソドックスな新作と人情噺の古典の組み合わせで、花緑の落語の魅力を堪能した。口跡さわやかなメリハリの効いた話術で大きなドラマを紡ぎだす、その華のある表現力がすばらしい。

 新作の「鶴の池」は、バレー「白鳥の湖」の落語化だ。
 若殿コウノスケは、妖術によって鶴に化身させられている姫アヤノと恋に落ちる。ほんとの愛の誓いが姫の妖術を解くのだが、妖術使いに邪魔されてその娘と愛を誓ってしまう。しかし、ほかに生きる甲斐なしとしてともに死を賭したコウノスケとアヤノの愛が妖術を破るが、ふたりは天国に昇っていく。

 アヤノの4人の侍女を一人で演じるのもいいが、コウノスケの5人のお見合い相手のはちゃめちゃな個性をかなり極端に演じ分けるのが楽しい。
 新作ながらきちんとした構成の落語で、花緑がストーリー・テラーとしての才能を発揮している。

 世話物である「子別れ」は、酒と女が原因で妻に出て行かれた男が再起し元の鞘に納まる夫婦愛の話だ。その間に立つ子供を通して親子愛も描かれる。
 単純ともいえるストーリーだが、デテールをきちんと描くことで圧倒的なリアルさを獲得している。地の話と演じるときでは声の迫力がまったく違う。
 愛がテーマで、粋とは違い直球勝負だとは本人の弁だが、レベルの高いドラマを観ているという感じだ。

 これを観たので、劇団儚創狂の旗揚げ公演「ALIVE」が観られなかった。しかたない、たまには気分を変えたくなるのを許してもらうしかない。


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