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《2002.2月−5》

陳腐なスタイル、陳腐な内容
【創造者たち (無限)】

脚本:副島直 演出:伊集院晃生
9日(土) 18:30〜20:20 ぽんプラザホール 2000円


 つまらん作品を見てしまった。作る側の姿勢まで含めてオリジナリティを感じさせない非創造的な作品だ。
 「本ありき」とか、「肩の凝らないただひたすら面白い作品」を目指すとかいいながら、どうしようもなくできの悪い脚本で、しかも肩の凝らないどころか変に理屈をつけている分始末が悪い。

 映画界が舞台だが、すべてが既存イメージの借り物だ。市川昆監督が横溝正史作品を田辺誠一主演で、閉鎖直前の松竹大船撮影所で撮影していると思えばいい。
 そこに安直に類型的で軽薄な人物を配して、ドタバタにもならない軽薄なストーリーが展開する。

 冒頭、舞台でのけっこう長く続くシーンが撮影シーンだったとは! カットで撮るのが普通でまさかそんなやりかたはない。しかしそのやりかたがこの作品のキーになっているのだから、前提からしてめちゃくちゃだ。スターが失踪した対応策など考えなくても、普通は編集でなんとかしてしまうはずだ。
 そのスターが失踪してもマスコミのことなどどこ吹く風だ。撮影所の最終作の最終シーンの撮影にマスコミが来ていないはずはなかろう。スターは数時間後のっそりと現れて落着だが、状況設定が独りよがりでリアリティのないことおびただしい。

 くどくどと何を言っているのかわからないベテラン役者や監督の説教調の自己主張も気になる。また、スターの人間性は低いというような固定観念の押しつけなどまっぴらごめんだ。
 そうなんだこの芝居づくり、何もかも陳腐なスタイルばかりで、面白さも低級で楽しめない。よかったのは場面転換を助けていたコロ付きの廻り舞台の装置くらいか。

 この公演はアクティブハカタプロデュースの劇団「無限」の第1弾創立公演で、出演者はアクティブハカタ所属タレント(!)だ。典型的な仲間うちの公演なのか、系列の児童劇団員とその親とおぼしき観客が目立つ。
 このレベルで当日券2500円は高すぎるが、前売り券2000円との差額が大きいのは仲間うちに前売り券を売りさばくためで、一般客を視野に入れない料金設定ではないかと思うがどうだろうか。私のような一般客は最初からあてにしていないということだろうか。


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