福岡演劇の今トップへ 月インデックスへ 前ページへ 次ページへ


《2002.2月−8》

じっくり見せるがやや冗長
【人情噺文七元結 (松竹・博多座)】

口演:三遊亭円朝 脚本:竹柴金作
17日(日) 13:55〜15:15 博多座 1980円


 辰之助が見たくて、二月博多座大歌舞伎の昼の部のうち「人情噺文七元結」を一幕見で観にいった。
 NHKのトップランナーで見た辰之助の荒事の芸が迫力があり面白そうだったが、世話物ばかりしか見たことがない。今回も典型的な世話物だ。

 左官長兵衛が娘のおかげで工面してもらった50両を、店の金を無くして身投げしようとしていた文七にやってしまう。
 落語をかなり引き伸ばしてやるので、女郎屋・角海老の場など女将と長兵衛娘お久とのやりとりのあと女将と長兵衛のやりとりが続き、一見ていねいにみえるが新しい登場人物が登場するたびに説明するので同じ説明が二度三度と繰り返される。それがかなり冗長で、落語のテンポの方がいい。

 しかし、突っ込んで引き伸ばしているところでは人物の思いをみごとに表現しているところもある。金をやるまでの決心をする長兵衛と文七のやりとりはじっくりと書き込まれていて説得力がある。決心がつかず行ったり来たり揺れ動く長兵衛の気持ちが繊細に表現されている。

 長兵衛の菊五郎はさわやかだが、半分遊び人にしてはさわやか過ぎかなと思うくらいだ。長兵衛女房お兼の田之助が楽しい演技をみせる。
 文七の辰之助は、存在感と切れのある辰之助らしい演技だ。最後まで長兵衛をほんとうには信じておらず、押し付けられたものが本物の50両だったとわかったときの演技など見せる。

 一幕見は、チケット売り場で10時から売り出しのチケットを購入し、幕の開演の20分前に入り口に並び、劇場の担当者が案内してくれる。一幕見席は三階の両端の計32席だ。イヤホンガイドはもちろん使える。
 きょうの「文七元結」は下手側の席だったが、16席のうち9席は空きだった。一幕見は宣伝を手控えているのかチラシにもひっそりとしか書かれていないし、ホームページにも書かれていない。気軽に歌舞伎を楽しむにはもってこいだが、博多座はC席の料金が5250円と高いこともあり、歌舞伎座に比べて一幕見の料金が1.5倍〜2倍になっている。歌舞伎座ほど気軽でないがまあしかたないか。


福岡演劇の今トップへ 月インデックスへ 前ページへ 次ページへ