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《2002.2月−9》

2劇団のコラボレーション☆劇団の個性が見える
【外食王オムレット 福岡電話物語 (ギンギラ太陽'S+轍)】

作・演出:大塚ムネト+日下部信
20日(水) 19:30〜21:50 西鉄ホール 2500円
23日(土) 14:00〜16:20 西鉄ホール 招  待


 今回の公演も面白いのだが、大変楽しんだ昨年のアンコール公演を基準に考えることになるのはしかたがない。
 そういう面から考えると、2本立てということもあり食い足りないという若干の不満は残る。しかし、合同公演として両劇団の特性がうまく融合したところとそうでなかったところとの対比を、けっこう面白く観た。

 「福岡電話物語」がはじめに上演された。上演時間は1時間弱で、福岡に電話サービスが開始された明治32年の、電話と山笠の確執の話だ。
 廃棄された携帯電話が、明治32年にタイムスリップし、電話サービスの立ち上げの現場に行く。そこでは、客集めに必死の電話局に、電話線のために山笠の丈を低くすることに不満を持つ男たちが、交換機を壊そうと殴りこんでいる。
 当時の福岡の状況がうまくセリフなどに折り込まれていてリアリティがあるのがいい。

 次に上演された「外食王オムレット」は、外食産業の話だ。天神のオムレツ屋を軸に、ハンバーガーショップ、ロイヤル、牛丼店、コンビニなどが入り乱れての外食産業戦国時代の激烈な競争をドタバタ調で描く。
 単に発音が似ているだけで、ストーリーは「ハムレット」とはほとんど関係がない。オムレットがどこと提携しようかと外の世界を見て歩くが、結局おにぎり軍団をもつコンビニにみんなやられてしまう。この場合現実はオムレットにとってハッピーエンドとはいかない中途半端なエンディングだ。
 オムレットが架空のお店であり、登場するのがチェーン店で、建物などの具体的なものではないということもあって、岩田屋や雁ノ巣飛行場に対するほどには思い入れがしにくい。そのためどうしても他人事という見方をしてしまい、なかなか乗れず単発の面白さをつなげたという印象だった。関係が入り組んでいてわかりにくいのもつらかった。

 面白かったのは「ギンギラ太陽'S」と「轍」の演技の質の違いだ。
 外向的、開放的で柔軟な「ギンギラ太陽'S」の俳優の演技に対し、「轍」の俳優の演技は内省的でやや硬い。その差は際立っていた。例えば、「ギンギラ太陽'S」の松清貴樹の自分をさらけだし開き直ったような軽快さに比べ、「轍」の河原新一の演技は積み上げてばかりで自分をこわせない演技のように見えた。
 「ギンギラ太陽'S」の俳優が軽快さを楽々とこなしているとは思わないが、それでもその軽快さは「轍」の俳優にいい影響を与えているように感じた。

 初日から満席だった。男性客の割合が多く、関係する業界の人だろうかスーツ姿の人が多かった。


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