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《2002.4月−3》

成井豊の作風☆変わった!?
【アンフォゲッタブル (キャラメルボックス)】

作・演出:成井豊
7日(日) 14:00〜16:00 福岡市民会館大ホール 2250円


 ほぼ一年ぶりのキャラメルボックスで、新作であるこの作品は相変わらずファッショナブルでかっこよくて楽しめる。例えば、ホテルロビーから車の中へ、出演者が自ら軽々と椅子を運び並べて10秒もかからない、というような場面転換のかっこよさだけでも感動してしまう。人物も、悪役までもかっこいい。
 しかし、内容は明るく希望に満ちてばかりいるわけではない。また、決してわかりやすいばかりでもない。

 今回の公演は、舞台の印象が象徴的で深くなったというのまず感じた。
 原作があるせいかも知れないが、すっきりきっちり割り切れず、本筋なのかそうでないのかわからないような場面展開がけっこうあり、さらに相互の時間関係など入り込んでいて、わかりやすいとはいえない。そういう点で、この作品で成井豊の作風が少し変わったのかな、と思った。

 大画家アンドリュー・ワトソンの絵が画廊に持ち込まれた。時間をスキップする骨董商・恭一は、来日中の大画家の未亡人、その絵の所有者などから、その絵が未亡人が忘れられない人に上げたものであることを知る。その絵を持ち出した健成は、恭一の義理の妹・唯の婚約者で、健成をだまして絵を手に入れようとする悪徳ブローカーと恭一は対決する。
 そのようなことから恭一は、愛する唯との結婚を決心し、そのためには健成と唯が結婚していた未来を変えることもやむなしと決意して終わる。

 タイムトラベラーという荒唐無稽を、実にていねいに描いていく。
 そして、そのような決意で終わるエピローグなしの緊張したままの終幕というのは、この劇団には珍しいのではないだろうか。この劇団らしくなく、終幕がさりげないのだ。
 それにしても、この作品の柔軟さ=複雑さになかなかついていけなかった。そのようなところでこの作品は作風が第三舞台・鴻上尚史に似てきたように思ったんだが、どうだろう。

 ほんとうに久しぶりに福岡市民会館大ホールに行った。
 ハーフプライスチケットで市民会館の三階席だったが、中央付近のためそれほど観にくくはなかった。最後列付近に若干空席がある程度で、観客は多かった。


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