オムニバスの5作品の上演だ。軽くなくしつこく迫っているところがまあ楽しめるが、表現的には不満なところも多い。
内容的には、構成力抜群の大きな公演を打っていたこの劇団の実力からすれば、なんとも物足りない気がする。
民家の部屋を使っての公演で、よその家を覗き見るような興味はある。しかし、観客のいるところは新聞紙は壁と天井一面に貼り付けてあり、生活臭は弱められてはいる。
開幕前から部屋の中央に白塗りで白い衣で仮面をかぶって、緩慢な動きでなまめかしい女優ERICAがいる。
最初の作品「エリカ―ERICA―」はソロのパフォーマンスだが、動きと言葉が結びつかないのがつらい。発せられた瞬間だけ言葉は生きているが、形象化されないために空中に消えてしまう。かなり具体的でしかもぶっ飛んでいて面白かった「キャーモ」を除けば、他の作品も同じような傾向だった。
表現の幅を広げようという努力は見えるが、軽さが持ち味の菊沢将憲の表現もなぜか上滑りしているように見えた。なかなか引っかかってこないのだ。印象が深いのは、いかにもプロという面構えの音楽担当・吉川達也が圧倒的だ。
やはり台本が弱いかなと思うのは、しばらく経った今、「キャーモ」を除けばほとんどストーリーも思い出せないことからもわかる。オムニバスだからしかたないところもあろうが、持ち味だった「しつこさ」はどこに行ったの?という変わりようだった。私には何とも中途半端に映った。
もともと、ちらしを見てかって観たことのある「劇団GIGA」とは別の劇団かと思ってしまったくらいだ。
ちらしの雰囲気が違い、劇団名の前に「空間再生事業」という言葉があり、作、演出に山田恵理香の名前が見えない。福岡ではあまり例がない民家を使った一軒家劇場での上演というのもいかにもマイナーっぽくってこれまでと志向が違うから、てっきり同名の別の劇団だと思ってもしかたがない。
山田恵理香はどこに行こうとしているのだろうか。女優ERICAもいいがそれよりも、構成力抜群の劇作家・演出家としての山田恵理香の作品が観たい。