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《2002.4月−5》

世俗的な表現◇思い込みを覆される
【死と変容 (青龍會)】

構成・演出:原田伸雄
13日(土) 19:10〜20:20 ぽんプラザホール 3000円


 観てすぐのメモに、「荒っぽい」、「形の典雅さにこだわらない」、「鍛えられていない」と書いた。どうもそれが、創る側にとっても狙いどころのようなのだ。

 舞踏というと、今までに観た大野一雄や山海塾は高踏的で象徴的という印象が強かった。
 こんど原田伸雄の舞踏を観て、その表現がなんとも世俗的なのが面白かった。舞踏とはこうあるべきという私の思い込みを覆してくれた。

 舞台には、蛍光する石が丸く三重に並べられている。あとは椅子だけだ。
 原田は白塗りだが高踏的な感じはなく、どこかユーモラスでさえある。手をよく動かすし、石と戯れたり、表現は普遍性をめざすのではなく極私的なところににとどまっている。それでいて退屈しないから妙だ。

 観ていると、ストーリーはあるが、それは観る側の個人の捉え方でどうとでもなるようなもので、明確とは言いがたいように思う。
 観ている時は自分のストーリーを作りながら観ているが、それが強く残るということはなく、見終わったら夢のごとくに掻き消えてしまうレベルだ。だから、チラシに書かれているように「ナポレオンの軍勢」や「モーゼの十戒」のような大きなイメージがあるとしても、極私のなかに取り込まれたと見えるのも却って楽しい。

 原田は、福岡市文化芸術振興財団の広報誌「wa」Vol.6 記載のインタビューで、自分の舞踏を称して「即興舞踏」といい、「日頃から肉体訓練はなし、不摂生は全部やる」というから、確かに舞踏手のイメージが覆る。そして、舞台を観てなるほどと納得した。

 青龍會は福岡に本拠をおく舞踏集団だ。1月ごろ観た「清島靖彦写真展」で舞踏手を写した写真があったが、その舞踏手が青龍會だったのだと、この公演を観てわかった。

 ぽんプラザホールで1ステージの公演で、超満員だった。


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