期待に違わず楽しめた。
この劇団の面白さは、別の世界まで垣間見せるところまで連れて行ってくれる、その表現の圧倒的な幅広さだ。不条理な状況設定を、無理やり納得させられるから妙だ。
やや長めのコントを集めたオムニバスかなと勝手に思い込んでいたところがあり、それにしてはなかなか終わらない。結局1本の芝居だったというのは終わってわかったが、1時間強の上演時間と感じたのに、実際は1時間半をゆうに超えていた。それだけ入りこんでいたということか。
ビルの警備員室、警備員・高島に同僚・岩田が「トッくん」という幽霊の話をする。その幽霊が実際に現れてふたりをさんざんいたぶるが、実は幽霊は偽で、高島の誕生祝いに岩田が仕組んだことで、「トッくん」を演じていたのは岩田の友人・十合だった。
そこに現れた大丸という男から今度は三人がさんざんいたぶられるが、大丸も実は仲間だった――とストーリーを書いても読んだ人にはちんぷんかんぷんだろう。
オムニバスではないがオムニバスに近いくらいに感じさせられるのは、ストーリーの途中で人が豹変して人物の関係が突然に大幅に変わり、ほとんど別の状況に変節してしまうのだ。その突然の変化は切れ味がよくて、質のいい不条理劇を見ているような風情だ。
全体がそのような構造だから、極端から極端に走る演技にも違和感はない。
演出では、監視ビデオカメラの映像が多用される。映像そのものがストーリー展開と密着していて、さらに外の世界と繋ぐ役目もしている。
演技は、そのしつこさやドツキなど吉本新喜劇ばりのところや、体力の限界に挑むような荷物運びなどリンゼイ・ケンプばりのところもあり、全体的にぎりぎりのところまでやっているという印象だ。
きょうの福岡の2日目はこの公演の千秋楽だが、6割の入りというところだろうか。若い女性が圧倒的に多い。
3月の太陽族といい、関西の若手劇団の芝居の質は高い。現実を笑いのめすようなところは東京の劇団にはあまりない関西の劇団の特徴ではないかと思う。