内田春菊の原作を1993年にフラワーズ・カンパニーのプロデュースで舞台化したときに、演出の木野花を中心に出演者とともに共同で作り上げた台本の上演だ。かって木野が主宰していた劇団青い鳥でやっていたやり方だ。個々の役への入れ込みから役柄がていねいに描かれているのが持ち味と言える。
OLの会話は楽しめるが、ストーリーはややありきたりで、ドラマとしてそれほど成功しているとも思えない。
同じオフィスで働く4人の女性、主役・中田、よく仕事をさぼる管野、恋に夢中の笠原、キャリア志向の三善の、更衣室と中田の部屋での会話で話が進められる。
営業の細川の子を妊娠したことを宣伝する管野の話と、殺人を犯したからと家事をやることを条件に中田の部屋に同居するゆうじの話がからみながら展開するが、同じ細川の子を三善も妊娠していた。
でも、管野は細川と結婚し、三善は出産してもキャリアウーマンを続ける。
そのような台本をどう料理していたかというと、演出も演技も一本調子(この言葉、このごろよく使っているがボキャブラリ不足なんでしかたない)で、シチュエーションにリアリティをも持たせるところまで行っておらず、楽しさもいまいちだ。
演出はていねいな読み取り不足で、ちょっとした言葉だが大事な言葉を無視しているようなところがある。反対に、単純な説明のセリフを照明や音響で盛り上げようとしているようなところもあり、違和感があった。しかし、ゆうじを女優が演じるというのは独特の雰囲気を出していてなかなかいい。
演技は、役者の個性に引っ張られてか4人の女性の個性がくっきりとしないのがもどかしい。役者の肉体が役柄にへばりついているという印象なのだ。セリフからではなくて人物のキャラ分析から入って、もう少し極端に表現してもよかった。
ゆうじを演じた梯麻里子がなかなか魅力的だ。今は太ったおばさんになってしまった劇団青い鳥の芹川藍の若い頃をちょっとやわらかくしたという雰囲気だ。
この劇団の次回公演は古城十忍の戯曲だから、新しい作品を取り上げようとする意欲は買う。面白い戯曲を発掘して上演していってほしい。