楽しみにしていたタブチヒロユキの新作「ホシガナラブ」は、力作で見応えがあった。
世界をひっくり返すために星を盗んでいる7人の泥棒たちと、その泥棒からさらに泥棒する男・コゴロ。さらに、泥棒たちを望遠鏡で見ている2人の女探偵。
星がなくなると世界は終わるという。泥棒のひとり・ヒサヲが、世界の終わりを希う探偵のひとり・ゆうによって星になりかかり消されようとするが、コゴロに盗まれた星が泥棒たちにもどるとヒサヲは助かる。
世界を終わらせることが目的ではない泥棒たちは、盗んだ星をもとにもどす。
う〜ん、なかなかうまく梗概をまとめきれない。
ドラマの骨格が浮かび上がり、人物の相互関係がみえてくると、それぞれの思いがぶつかりあって話が急展開する。
そこを、ヒサヲの宙吊りや音響・照明も合わせてうまく表現されている。コゴロが泥棒たちを説得するシーンは、そこを見るためだけにこの芝居を観る価値があるというレベルだ。
そのように印象的なシーンも多いが、それでも全面的に満足というわけにはいかない。
ひとつは、あちこちに跳ね回るようなやや冗長なセリフだろう。書き尽くしたい気持ちはわかるが、もっとシンプルにできると思う。説明調で、膨らませ過ぎとはしょり過ぎが混在しているように見えるのが気になる。
もうひとつは、泥棒たちの個性が描き分けきれていないことだろう。人物にはそれぞれに重い性格づけを意図しながらも、個性の表現が不十分のために説得力が弱くなってしまったように思う。
この公演は劇団空転象の第5回公演で、ふくふくホールで3ステージ。初日のきょうは7割ほどの入りだった。