テレビドラマに想を得たにしても、人物もストーリーもテレビドラマの設定の範囲を越えないのがまず気になる。
しかしそれはいちおう措いといて作品をみていくと、せっかく人物などをきちんと描いて土台を作りながら、その上に構築されたものがチンケで尻切れトンボなのが大いに不満だ。
リストラ予備軍のショムサンに与えられた任務は、亡くなった前会長が隠した宝を発見すること。成功しても失敗しても最終的にはリストラされるという会社幹部の策略は、よくあるパターンだ。新任の課長はかれらの敵なのか味方なのか。
宝探しに取りかかったメンバーは、いちど挫折しかかるが、仲間のひとりから諭されて再び取り組む。このあたりの掘り下げは、手動の穴あけ機が1回転したという印象はある。
結末までにもう2回転はあるな、と期待していたら、あと半回転もしないままあっけなく終わってしまう。
図面は簡単に手に入り、純金の玉が古い備品の中からぞくぞくと出てくるのだが、みんなはそんなことよりも仲間のひとりの課長への恋の成就にばかり気をとられている、というリアリティのなさだ。その課長は、ショムサンのリーダー真紀子の弟だったというお手軽な設定だ。課長の片腕である現会長の娘がショムサンの味方だったという逃げ道を作っておくのもちょっとひきょうかなという気がする。
結局、純金の玉が見つかるという最初の山までが開幕から55分で、あと10分で次の山もなくあたふたと何もかも解決してしまうのはあんまりだ。観客の私としては、水の貯まらないままの堰を切られてチョロチョロ状態で、欲求不満が募る。
状況設定はできているのだから、メンバーの葛藤や超克などにもっともっとしつこく迫ってほしかった。
ただし全部ダメというのではなく、ダンスシーンからスタートして舞台は生き生きしていて楽しめる。俳優は役の個性をうまく演じている。
初日を観たが、ほぼ満席だった。