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《2002.6月−11》

ややドロ臭く○エネルギッシュ
【ギャンブラー (シンシ・ミュージカル・カンパニー)】

作・音楽:エリック・ウルフセン 演出:リム・ヨウウン
19日(水) 18:35〜22:55 福岡サンパレス大ホール 7000円


 韓国ミュージカル「ギャンブラー」は、大型でやや大味な感じもするミュージカル作品だが、終盤の盛り上がりがみごとで見応えがあった。
 ややドロ臭い感じがするのは、ブロードウェイ作品や宝塚歌劇に慣れているためだろうか。しかし、きのうイタリアを破ったワールドカップサッカー大韓民国チームのようなねばり強さを感じさせる舞台だ。

 題名どおりカジノを舞台にした「恋」と「金」の話だ。
 カジノに冷やかしで来た若者とショーガールが恋をする。男は女が伯爵夫人からもらったすべてのゲームに勝てるという「黄金の鍵」を女から取り上げて賭けを始める。女の制止を振り切って男は賭けにのめりこむ。
 ラスト20分がカジノでの賭けのシーンで、みごとな緊張感だ。そしてみごとなどんでん返し。からくりが明らかになり、男は破産してピストル自殺する。

 そのラスト20分に至るまではドラマとダンスショーがないまぜでやや雑多だが、きらびやかな舞台で楽しめる。ダンスの切れや衣裳のセンスは日本の方が上かなと思うが、思わせぶりなところがなく正面から力で押しまくるドラマの運びはエネルギッシュだ。
 教会のシーンからカジノのシーンへ全員が上着をとったら瞬時に替わって、教会とカジノをオーバーラップさせる手法などうまい。

 俳優は意外にかっこよくない。
 若者・ギャンブラー役はダブルキャストで、きょうは若手のイ・ゴンミョンだ。さわやかでやや線が細いかなという印象だが、決めるところは決めていた。カジノのボス役は狂言回しも兼ねるが、ホ・ジュノが重々しく見せる。オカマダンサー役は韓国版ギャンブラーのオリジナルのようだが、演じたチュ・ウォンソンは三枚目のこの役を達者なダンスとユーモアたっぷりの日本語トークでこなしてショーのシーンを盛り上げる。
 ショーガール役のチェ・ジョンウォンは、それほど美人ではないが雰囲気がある。ずっと眼が離せなかったのが伯爵夫人役のキム・ソンギョンのきれいさで、ソロで歌う歌も聴かせる。

 昨年観た「地下鉄1号線」に比べると切れ味はいまひとつかなという気はしたが、気楽に楽しめるのはいい。それにしても、この作品も「地下鉄1号線」もヨーロッパミュージカルの翻訳、翻案であり、韓国オリジナルのミュージカル、例えば「春香伝」など観てみたくなった。
 アンコールでイ・ゴンミョンとホ・ジュノが1曲歌ってくれた。長いカーテンコールが済むとメインの俳優たちはロビーでサイン会だ。俳優をほんのそばで見られるのはいい。
 この公演は民音主催で、福岡では4ステージ。きょうは広いホールがほぼ満席だった。


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