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《2002.6月−20》

圧倒的なボリュームで◎ド派手に
【スペースラブ (世界一団)】

作・演出:ウォーリー木下
30日(日) 17:00〜19:00 シアターサンモール(東京) 3000円


 抜群の構成力とこれでもか!というアイディアで、楽しさに溢れた舞台だ。
 この作品はパルテノン多摩小劇場フェスティバルでグランプリを受賞して、この公演は凱旋公演だ。それだけのことはある、2時間ノンストップで繰り出されるアイディアのボリュームは圧倒的だ。

 地球外生物を探査に出かけた宇宙船が2年間で133の惑星を探査して、地球に到着する前の2日間が描かれる。
 クルーは8人。それぞれ思惑のある過去を背負い深い思いを抱えている。  地球到着2日前になって突然、宇宙空間に浮遊する女性ヒッチハイカーを見つけ宇宙船に乗せる。そのヒッチハイカーは地球人と見えた。

 クルーは出発前から諸々の事情を抱え、それがトラウマとなっている。クルーそれぞれの事情は、クルーを演じる俳優たちによって短いシーンで端的に表現される。
 それらがわかってくると実は、今はサーボーグとなったクルーの自殺した恋人の心臓が、クルーのひとりである女性生物学者に移植されていたことがわかる。
 そのエピソードを核として、車椅子の通信士が実は歩けたとか、クルーそれぞれのエピソードが演じられる。それぞれのエピソードのキーマンをヒッチハイカーの女優が演じることで、クルーそれぞれのトラウマが一見連携しているようにも感じさせるといううまい脚本だ。

 そのような内容を表現するのに俳優は徹底的に動き回る。
 エピソードのための回想シーンへは、宇宙船のシーンからわずかに照明を変えるだけで瞬時に変わる。例えば、車椅子の通信士役が即時に病院に入院中のおばあさん役に変わるが、十分についていける。作者は観客の想像力を信頼している。
 シンプルだが工夫された装置と照明がよく、切れ味のいい音響と音楽と併せて派手な舞台だが、内容をうまく盛り上げるための派手さで抵抗はない。背景の天井から垂らされた丸い穴をあけた4枚の大きな白布だけのシンプルな装置だが、ダイナミックに動く複数のライトとスモークで一時期のド派手な芝居のような派手さまで持っていっている。人々の思いが描けていて俳優の動きもいいので、ド派手が浮いてしまうこともない。

 宇宙のヒッチハイカーは実はひとりで地球を滅ぼしに来たエイリアンだった。彼女が仕掛けた危機を乗り切ってクルーは地球に帰還する。

 この劇団は神戸大学OBによる劇団で、関西で活動している。
 観たのは凱旋公演の千秋楽だったが、これだけ楽しめる芝居を作っても東京での知名度は今一歩か、6割ほどの入りだった。


 今回の東京での観劇は5本で、廉い席ねらいということもあるが入場料は全部で15000円、1本平均3000円だ。楽しさ、舞台の創造性からみて、福岡で2000円以上する芝居がいかに高いかがわかろう。
 今週末福岡にいなかったので、クレージーボーイズ「金メダルへのターン」、グレコローマンスタイル「アタルモハッケ」が観られなかった。残念。


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