*** 執筆中 ***
真実のあるなしで演技は全然ちがってくる。この舞台のうそっぽさが、いつもの演技に比べてまったく精彩を欠く山内まりの演技に如実に表れていた。
テーマはいじめ。
石橋と千香の結婚式の客はただひとり桐谷だけ。ただし式のスタッフに石橋の仲間がいて、結婚式は桐谷のいじめの告発し仕返しするために仕組まれたものだった。さらに、男たちから馬鹿にされていたという千香の告発が続く。
そもそもの発想が貧困としか思えない。それを豊かに見せるべく小手先でカバーしようとするから、できあがったものはいびつだ。その典型が、猪木や馬場の物まねや、興奮するとしゃべりがワヤになるキャラクタで、芸とは呼べないくだらなさのオンパレードだ。バイトの女性の名前や出身地の話で無意味にいつまでも引っぱるアホさ加減だし、クソ面白くもないしりとりなど埋め草にもなっていない。単なる時間稼ぎだから、演っているほうはいいかもしれないが観ているほうはたまらない。
せっかく、生きているのに死んでいるから見えないとか、新婦の喪服などそれなりのアイディアがあっても、くだらないものに埋没してしまう。くだらないものの整理がまず最初だ。
そのような中で山内まりはいかにも手持ち無沙汰に見えた。
当たり前だ、千香は十分描きこまれていない。何で石橋と結婚するのか、石橋をどう思っているのか、桐谷をどう見ているのか、他の男たちへの気持ちはどうかなど、その思いがていねいには書かれていないし演出で膨らませることもない。だから演技のしようがないのだ。
馬鹿にされていたことの告発もいかにも唐突でインパクトがないし、正十二面体をかかげられても意味がわからない。白けた演技と見えたが、演技に繊細さも要求されないような脚本だからしかたない。きっちり脚本を読み取りていねいに積み上げる山内まりに、読み取りようがなかった脚本だったと言ったら言い過ぎだろうか。
他の俳優の演技は、脚本の粗っぽさをそのまま容認してしまったという粗っぽい演技だった。
この舞台は劇団グレコローマンスタイルの第二回公演で、芝居屋コロシアム2002参加の2つ目の作品。3ステージが上演される。この劇団の旗揚げ公演を見損なっていたので、今回初めて観る。私の観た回は7割くらいの入りだった。