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《2002.12月−17》

公衆浴場に☆芝居観に行った
【サロメ (GIGA)】

原作:オスカー・ワイルド 脚色・演出:菊沢将憲
20日(金) 21:10〜23:00 都湯 1500円


 場所も含めて劇団GIGAらしい特異性で見せる。
 殺してでも自分のものにしようとする恋の執念を見せるのに、サイケ調の面妖な動き・しゃべり・衣裳で、感情的におぞましさを強調しながら徹底的に引っぱる。一時期のアングラ演劇で流行った手法だが、全体的に一本調子で切れ味に欠けるのが残念。さらにひと工夫ほしいところだ。

 「サロメ」は、題材を新約聖書に取っているとはいえ、宗教性を感じさせないおぞましさに溢れた戯曲だ。そのことで激しい人間の性をえぐる。
 義理の娘サロメにこだわる王エロド、預言者ヨカナーンに恋するサロメ、娘に嫉妬する妃エロディアス。自分になびかないがどうしても自分のものにしたいという激烈な恋情が、サロメをして恋情を満たすためにのヨカナーン首を自分のものにしようとする。そのために王に踊りを見せてその首を手に入れる。

 この舞台の特徴は、装置や衣裳もさることながら、ゆったりとしたリズムを持ったまとわりつくような一種独特なしゃべりだろう。切れの悪い浄瑠璃といった趣だ。それを強調する生演奏の音楽がかぶさる。情に訴えて観客を引っぱっていくところはまあ成功している。
 ただ全体的に舞台をハイテンションのまま維持していこうという意図が表れ過ぎていて、緩急に乏しくなっている。例えば、ヨカナーンに迫るサロメとのやりとりでは、原作と同じようなセリフが語られているにもかかわらず、そのやりとりのおもしろさはほとんど消えてしまっている。どぎつさとエロスを混同してしまっているところもあり、エロス度は必ずしも高くない。

 キャステイングはおもしろい。
 美人と言うわけでもない太めのサロメ(下坂真澄)に意表をつかれるが、けっこうユーモラスで新鮮。王の幸田真洋、妃の宮原清美がなかなかの存在感だ。

 けっこういろんなところで上演される芝居を観てきたが、銭湯で上演される芝居は初めて観た。都湯は、春吉というあまり上品ではない場所柄に加え「神田川」の世界を地で行くような古典的は銭湯なのがよかった。この劇団は上演場所にこだわっていて、民家、カフェからこんどの銭湯ときて、次はどんなところでやってくれるのだろうか。
 この公演は4ステージ。私の観た最後の回は満員で立見も出ていた。


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