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《2003.6月−5》

生身で笑いを取ることの工夫が要る
【大江戸借金地獄/スッポカシちまった悲しみに −ドラマチックジャポン Bパート− (ふわっとりんどばぁぐ)】

作・演出:楠田青土/作・演出:阿久根知昭
7日(土) 13:05〜14:10 ぽんプラザホール 招待


 ふわっとりんどばぁぐの「ドラマチックジャポン」は、1パート2本立て3パート。各パート2ステージで、全6ステージ。各パートは、楠田青土と阿久根知昭の作・演出作品が1本づつ。上演時間は1本約30分。
 きょうはまずBパートを観た。「大江戸借金地獄」(楠田青土 作・演出)は仕掛けのおもしろさが生きず不発だったが、「スッポカシちまった悲しみに」(阿久根知昭 作・演出)は人物の思いをきっちり描いていて楽しめた。

 「大江戸借金地獄」は、笑わせるつもりだろうが全くと言っていいほど笑えない。  ラジオドラマだと跳べるところが、役者の演技に引っかかって跳べない。想像力が先回りしていることもあるが、少しは突っ込んで跳んでみろよ!と役者に言いたくなる。笑わせることがそれほど簡単じゃないというのを、客席にいても感じてしまった。
 夫が作った100両の借金の取立てに悩む女将、用心棒を雇うが、それが武士(姿の役者)と法律マニアの書生で、使いものにならない。夫は現金収入のために取立て屋の用心棒となり50両の金をもらうが、それを元手に女将は取立てやと一勝負し、負けて借金は200両になってしまう。
 縮こまった演技のため、人物がつまらなくて、狙ったユーモアが出ない。勢いありそうに見せかけばかりで、わざとらしくて足が地に着かず、そこに観客を引っぱる内面的な勢いはない。もう少しぶっ飛んだ演技で、人物のバカバカしさを強調してもよかった。テンポよくというのも課題だ。

 「スッポカシちまった悲しみに」は、妹の結婚式をスッポカしたオカマの誕生日に、妹が訪ねてくるという話。
 感謝の気持ちからどうしても式に出てもらいたいと思っていた妹。妹のことを考えて式に出なかった姉(?)。スッポカしたことでもつれた思いが、徐徐に見えてくる。そのこころの動きの表現がポイントになる。
 演出はふたりの気持ちを追って実にていねいだ。俳優もよく応えた。妹の楢崎千春がいい。結果、思惑どおりホロリとさせられてしまった。
 ちょっと気になったのが、例えばお菓子の箱を開ける演技にみるようなくすぐりで、ユーモアをとおり越して流れを阻害していた。ケーキやシャンパンの手際の悪さも少し気になった。
 この作品は、阿久根知昭の放送劇作品から私が選んだ「舞台化したいベスト5」のなかで唯一上演されるものだ。

 受け取る側としては、放送劇のほうがイメージを膨らませやすい。
 その舞台化は、生身の人間でイメージを具体化することになるから、放送劇以上に工夫が必要だろう。今回はその工夫の差が出てしまった。それにしても、笑わせることのほうがやっぱりむずかしい。

 はじめと中間にナビゲーターの語りが入るが、却って感興を削ぐ。このパートのテーマ「約束−プロミス−」はややこじつけ気味。
 このBパートの最初の回を観た。若干空席があった。


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