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《2003.6月−7》

2本とも楽しんだ
【RIVER OF SONS/バス通りメモリアル −ドラマチックジャポン Cパート− (ふわっとりんどばぁぐ)】

作・演出:楠田青土/作・演出:阿久根知昭
7日(土) 19:00〜20:00 ぽんプラザホール 招待


 このパートは2本とも粒ぞろいで楽しめた。楠田作品のおもしろさに初めて触れた。上演時間はそれぞれ約30分。

 「RIVER OF SONS」(楠田青土 作・演出)は、突然死した父親が、RIVER OF SONS=三途の川から引き返して、娘の結婚相手を探るという話。
 看護婦である娘に近づくために、病人と医者に成り代わる。はじめ92歳の老人、それから4歳の男の子になって情報収集し、最後に恋人の医者になって娘がこの医者からプロポーズされていることを知る。
 三途の川をメンバー専用のリゾートに見立て、そこのコンパニオンが魂の売買人を兼ねていたりと、バカバカしいアイデアがなかなか効果的だ。
 恋人のために現世に帰るとかいうのはよくあるパターンだが、ここでは発想がユニークで楽しませてくれる。
 俳優がいい。不破一夜の強烈なキャラクタが生きていて、観ていて楽しい。サンズギャル(コンパニオン)の松尾優夏は魅力的だ。娘の黒岩由佳子もきちんと見せる。

 「バス通りメモリアル」(阿久根知昭 作・演出)は、結婚25年で夫を亡くした妻が、恋人時代、新婚時代をすごした福岡の街をバスで通るときの回想のひとりごと。だが、夫(の幽霊)は妻のとなりの席にいて相槌を打っている。
 放送劇では(私の読み間違いかもしれないが)最後まで幽霊とわからずラストに衝撃があったが、ここでは夫ははじめから幽霊とわかる。だから、妻の思いを観客に向けて増幅する。ただ妻の思いが、夫ではなく思い出に恋しているように少し思えたのはしかたないか。でも、まわりの人は、ハンカチを出して大々的に泣いていた。私もウルウルだった。
 その妻を高原京子は、ていねいに表現しながら、情に流されない抑えたみごとな演技で見せた。夫の上瀧征宏もじっくりと受けた。
 小粒ながらきらりと光るような作品で、シンプルな構成でも内容の充実でこれだけのレベルに持っていけることを示した。

 そんな風で見応えがあった。30分の小品だからとあなどれない。テンポのよさが心地よかった。

 この公演のパンフに、私の名前が「宣伝協力」欄に載っている。この公演にはかなり早い時期から関係しているが、「宣伝協力」した覚えはないので、できれば「Thanks」のところに「福岡演劇の今」としてほしかった。
 「宣伝協力」ではないから、この感想はもちろん掛け値なし。念のため。
 観たのはこのCパートの最初の回。若干空席があった。


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